ごったん(鹿児島県霧島市) | コワイハナシ47

ごったん(鹿児島県霧島市)

怖い話というには少し違うかもしれないが、以前、私が工場に勤めていた際、霧島市出身の山城さんという方から聞かせてもらった、南九州地方に伝わる「ごったん」という弦楽器についての、こんな話がある。

これはもう二十年ほど前の話になるそうだが、山城さんの父が癌になってしまい、余命数か月の宣告を受けた。

当時から福岡市の工場で働いていた山城さんは、お兄さんからの連絡でそのことを知り、すぐにでも帰りたかったのだが、仕事が忙しくて中々帰ることができず、結局、鹿児島に帰ることができたのは、最初の連絡から一月ほど経った年末の連休になってからだった。

久々に会う父は大分体が弱っており、あと一か月もつかどうかという状態だった。

実家に残って最期を看取りたいという気持ちはあったのだが、どうしても仕事に穴を空けることができず、あとは兄に任せて年明けから山城さんは福岡市に帰ることになった。

それから数日後、容態が急変したという事で兄から連絡があり、山城さんはすぐに鹿児島に帰ったのだが、すでに父は危篤状態で、間もなく息を引き取った。

葬儀は山城さんの実家で行われることになり、大勢の親戚や知人などが集まっていたのだが、その中に山城さんの兄の奥さんである美恵さんの姿もあった。

美恵さんは昔から感覚が鋭いところがあり、不思議な出来事を多く体験したり、街を歩いているときに全く知らない占い師からスカウトを受けたこともあるそうだが、美恵さん自身は論理的な思考の持ち主で、自分の身に起こる不思議な出来事も、何らかの形で説明ができるのではと考えていたそうだ。

そのため、そちらの道には進まずに一般企業に就職し、結婚してからはスーパーのパートタイム従業員として働きながら家計を支えているという。

葬儀が終わった二日後、そんな美恵さんと兄が山城さんの実家を訪ねてきた。

なんでも、葬儀の日から毎晩、美恵さんは同じ夢を見るのだという。

その夢というのは、亡くなった父が自分の部屋でごったんを持って座っているのだが、困った顔をして、

「無い、無い」

そう言ったかと思うと、ごったんを置いて部屋の中をごそごそと探し回る。そこで夢は終わるそうだ。

その時はまだ山城さんも忌引き休暇中で実家に滞在しており、それなら皆で実際に父の部屋へ行ってみようということになり、母・山城さん・兄夫婦の四人で二階の父の部屋を覗きに行ってみた。

すると、父の机の上には年代を感じさせる色褪せたラジカセがポツンと置いてある。それを見た母が懐かしむような顔で頷いている。

「あぁ、これね」

そして、部屋の押入れをごそごそと探し回り、いくつかのカセットテープを取り出した。

亡くなった父は生前ごったんを引くのが趣味で、自分が演奏をしているところを録音し、それを部屋で聞くのが好きだった。

なので、きっとごったんとカセットテープを「あっち」に持って行きたかったんだろうということになり、父の入った仏壇にごったんとカセットテープをお供えすることになった。

するとその晩、またしても美恵さんの夢に父が現れた。

父は部屋でごったんを持って座っており、これまでと違いにこにこと笑っている。

「ありがとう」

そう一言、父が言ったところで夢は終わり、それ以降父の夢を見ることはなかったそうだ。

この話、ただの夢だと言われてしまえばそれまでなのだが、私は好きだ。

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『ごったん(鹿児島県霧島市)』へのコメント

  1. 名前:よーしも 投稿日:2019/06/25(火) 22:54:22 ID:f7d4469e4 返信

    山城さん…聞いたことあるなー…
    僕も同じ会社に勤めてました(笑)
    不思議な体験ですね