不思議な傷 (静岡市) | コワイハナシ47

不思議な傷 (静岡市)

今回、静岡の怖い話を収集するにあたり、静岡在住のライター・政美さんに取材の協力をお願いした。

政美さんは脳梗塞で倒れたお母さんの介護をしながら働いている。

お父さんは二十数年前に突然の病で亡くなってしまった。そのため、「お父さんをいたわってあげられなかった分も、お母さんを大事にしたい」と政美さんは言う。

とはいえ、介護と仕事の両立は思った以上に大変で、寝不足でつらいこともあるそうだ。そんな時にお母さんからわがままなことを言われると、優しく笑ってばかりもいられない。と、ため息をつくこともあった。

ある日の夜半過ぎ、政美さんはいつものようにパソコンに向かって仕事をしていた。静岡県の心霊スポットに関する資料整理だ。

仕事用のパソコンの隣には、もう一台小さめのノートパソコンを置いている。隣の部屋で寝ているお母さんの様子をウェブカメラで確認するためだ。お母さんに何か異変があった時は、すぐに隣の部屋に駆けつけられるようにしている。

ふとお母さんが映るパソコン画面を見ると、赤く光るオーブ(火の球)が三つ浮かび上がってきた。

政美さんは驚いて、一瞬息を止めた。

オーブはお母さんの胸元でゆらゆらと揺れて、しばらくすると、一つ、また一つと消えていった。

「疲れていたので、見間違えたのかも」政美さんはそう思うことにした。

翌日のことだった。政美さんはお風呂に浸かった時、ふと右肩に視線を向けた。すると、一筋の傷ができていることに気が付いた。傷には血が出て固まった痕あとがあり、赤い線になっている。

政美さんは不思議に思った。これだけの傷ができるなら、いつどこでなぜできたのか、覚えがあるはずだ。しかし、思い当たる節が全くない。

介護でお母さんを抱き起こすことがあるので、肩が凝ることがある。だが、肩凝りと傷の跡は関係ないだろう。

それからの政美さんは、その不思議な傷が気になってお風呂に入るたびに見ている。しかし、全く消えないそうだ。それどころか、赤い線は徐々に太くなってきているという。

政美さんは、この本の仕事に関わったからではないかと考えているようだ。そして、「仕事上で起きた霊障だったら、労災かな」などと冗談めかして言った。

実は、オーブの色には意味がある。一説によると、赤い色は霊の怒りの表れだそうだ。とすると、霊の怒りが政美さんの肩に傷をつけたのだろうか。

そのことを政美さんに告げると「母に優しくしてやれという、亡くなった父の啓策なのかも」と自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

介護と仕事で一生懸命な政美さんに対して、「霊の怒り」などと申し訳ないことを言ってしまった。私は政美さんに詫びた。

この本が出版される頃には、政美さんの傷が完治していることを願う。

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