鶏頭の花(静岡県伊豆市) | コワイハナシ47

鶏頭の花(静岡県伊豆市)

Mさんという漫画家がいる。

彼女は伊豆の出身で、代々地元の網元だったそうだ。したがって伊豆の高台には先祖代々の立派なお墓が建っているという。

Mさんが中学生の頃、檀家のお寺の習字教室に通っていた。

ある夏休み、そのお寺で習字を習っていて、何気なくふと開け放された障子の向こうを見た。目に入ったのは、海に向かって延々と続く丘陵と、そこに広がっている墓地であった。その中に一際目立つ大きな石碑が見える。Mさんの代々のお墓がある場所だ。ところがその石碑のすぐそばに長い赤い棒が立っていて、そのてっぺんに花が咲いている。

ちょっと奇妙なものがあるなとよく見ると、それは一本の鶏頭の花だった。

(鶏頭って一本だけで咲くものだったっけ?)とMさんはその時思った。

その三日後、Mさんのお父さんが急死した。もともと酒癖が悪く、その酒が原因であったという。

お葬式が終わって、納骨するために代々の墓に来た。

鶏頭の花がない。

それは抜き取られたのでもない。敷地には白い玉砂利が綺き麗れいに敷かれているので、抜いたのならその跡が残っているはずである。

(あの時見た鶏頭は、なにかの見間違いだったのかなあ)とMさんは首をかしげた。

何年かして、またお寺で習字を習っていて、ふと墓地を見てゾッと全身に鳥肌がたった。

あの時とまったく同じ場所に、一本の長い赤い鶏頭の花が咲いていたのだ。

さすがにこの時は、お母さんに「ねぇ、うち、近々誰か死ぬかもしれないよ」と言った。その時に、何年か前に見た鶏頭の花のことも話したが、まるで相手にされなかった。

三日後、叔父おじにあたる人が亡くなった。

「お母さん、やっぱりそうだったじゃない」とMさんが言うと、お母さんも気味悪がって、納骨の前日にふたりで墓地へ行ってみたのである。

今度は、咲いていた。

白い玉砂利からピッと伸びた、七十センチくらいはある一本の赤い鶏頭。

「ほら、お母さん、あったでしょ!」と思わずMさんは叫んだ。

お母さんも気持ち悪がって、それをすぐに抜いて捨てたという。

その後、もう一度Mさんは、墓地に咲く赤い鶏頭の花を見たという。

この時はさすがに怖くて、誰にもそのことは言わなかったが、やはり数日後に親戚の者が死んだのである。

シェアする

フォローする