山頂の足音(東京都) | コワイハナシ47

山頂の足音(東京都)

東京都の最高峰である雲取山の山頂近くの山小屋でのこと。

登山インストラクターのYさんたちが休息していると、測量隊が入ってきた。

この山の頂上で三角測量をおこなうという。この測量、真夜中にやるのだそうだ。

なぜかと聞くと、今は測量にレーザーを使うので、夜の方が適しているのだという。

Yさんたちは、「へえ、夜中に。大変なんですね」というような会話を測量隊の人とかわした。そして夜遅く、測量隊の人たちは仕事に出かけたのである。

しばらくして「わあーっ!」という叫び声とともに、顔面蒼そう白はくとなった測量隊の人たちがあわてて山小屋に飛びこんできた。

「どうしたんですか!」と聞くと「いや、もう、測量なんてできません」と言いながら、トランシーバーで「今夜は中止だ!」と、やりとりしている。

なにか雰囲気が尋常じゃない。

「なにがあったんですか?」と聞くと、

「出たんですよ」と言う。

三角測量のため、お互いの位置を確認しあいながら、計器をのぞいていたという。

すると、ザッ、ザッ、ザッ、ザッと登山隊が登ってくる靴音がする。

「なんだ、こんな夜中に登山か?」

とつぶやきながら、計器を見る。

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、と靴音がすぐそこを通過する。

最初、この登山隊はこのままそこにある山小屋に入るものだとばかり思っていたが、すぐ目の前を通過するということは、このまま山頂へ行くということになる。

(こんな夜中に?)

と思って顔を上げ、前方にライトを照らしてみた。すると、登山帽をかぶり、ザックを背負った男たちが目の前をまさに通過していたのである。

「へーえ」と驚いて、そのままライトを下げると、男たちの腰から下がない。

だが靴音は延々と聞こえているではないか。

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……。

「うわあー!」と悲鳴をあげて、山小屋に飛びこむほんの少し前のことだった。

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