そっちは危ない(沖縄県) | コワイハナシ47

そっちは危ない(沖縄県)

Mさんは沖縄の出身である。

ある夏、Mさんは地元の海岸に友人たちと泳ぎに出かけた。そこは波の状態がいいらしくて、各地からサーファーたちがやって来るちょっとしたスポットなのだそうだ。

昼下がり、Mさんがひとり泳いでいると前方の波間にぬっと人が現れた。

アメリカ兵と日本兵だ。

驚いてそれを見ると、そのふたりは海面に腰から上だけを出し、アメリカ兵は凄い形相をして、両手を伸ばして日本兵の首をぐっ、ぐっと絞めている。

Mさんはその場からただ逃れようと必死に沖に向かって泳ぎだした。すると今度は、ぐっと海の底から右足首をつかまれた。

わあ!とMさんは悲鳴をあげてなんとかそれを振りほどこうとする。が、身体が前にもうしろにも進まない。と、

「そっちは危ない」

という声がして、ザッと海面から足首をつかんでいた者がその上半身を見せた。

大おお火傷やけどを負った子供だったという。その子が陸に向かって引っ張っていくのだ。

Mさんの頭の中は真白になった。はっとして左手前方を見れば、はるか向こうに洞どう窟くつのある岩場があって、その洞窟の中に大勢の人たちが立ってこちらを見ている。モンペに頭巾姿の女性や子供、戦闘服姿のような男たちもいる。明らかに戦時中の人たちだとわかる。ふっと友だちのいる浜辺を見た。

友人たちも浜辺からその一部始終を見ていたようで「早くこっちへ来い!」と大声を出しながら大騒ぎをしている。その瞬間、ぱっと足首をつかむものの感触がなくなり、身が軽くなった。

Mさんはその後、どうやって浜辺まで泳ぎ着いたのかは覚えていない。

ただ、浜に着いて、つかまれた足首のあたりを見ると足の毛がチリチリに焼けていて、軽い火傷を負っていたという。

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