大勢の友人(広島県) | コワイハナシ47

大勢の友人(広島県)

学生の頃、ロックバンドをやっていたというAさんの話である。

Aさんの実家は広島市郊外の、わりと閑静な場所にある農家であったという。

家には大きな納屋があった。ロックの練習をするにはもってこいのスペースだ。収納してあるトラクターや農耕用具を外に出して、そこにメンバーの四人が集まってロックの練習をやる。

その日は、バンドのライヴを数日後に控えていたので、夜遅くまで練習に励んだ。

Aさんのお母さんが夜食におむすびを差し入れてくれた。

「おっ、かあちゃん、ありがとう」

そう言ったものの、四人分のおむすびにしては、量があまりに多い。するとお母さんが、「あら?他のお友だちは?」と妙な顔をしてきょろきょろしている。

「かあちゃん、他に友だちなんかいねえよ。俺たち四人だけだよ」とAさんが言うと、

「だって、あんたたちが演奏してたら、『あついーっ』とか『燃えるう』とか『わあーっ』とか、凄い声援してるお友だちがいたじゃない」と変なことを言う。「だからいっぱいお夜食作ったのに……」

「変なこと言うなよかあちゃん。わっ、こんなに食いきれねえや」と言いながらも、Aさんたちはおむすびに食らいついた。

翌朝、Aさんが起きてきて「かあちゃん、昨日は夜食ありがとう。みんなよろこんでたよ。あんまりたくさんあったから食い切れなかったけどよ」とか言っていると、お母さんが、

「やっぱりいたじゃない。たくさんのお友だち。みなさん納屋に寝てたわよ」と言う。

どういう意味だよと聞くと、お母さんは早朝、夜食を運んだお盆と食器をさげようと納屋に入ったという。すると納屋の中には足の踏み場もないほどの、たくさんの人が寝ていたというのだ。やっぱりあの時、凄いノリの声援をしてたのはこの人たちだったのねと思って、起こさないようにと気を遣いながら、その隙間をそっとぬうようにして奥に入り、お盆と食器を持って、静かに納屋を出たのだという。

「かあちゃん、昨夜ゆうべから変だぜ。四人しかあの納屋にはいなかったって。そもそもそいつら、一体どんな奴らだったんだよ」とAさんに聞かれて、お母さんはハッとした表情をした。

「そういえば、あんたたちジャージ穿はいてたから、えらくモンペに似たジャージもあるもんだなと、思ったのよ。頭ず巾きんかぶってる人もいたわね、あっ、子供いた?」

「そんなやつはいねえよ」

「だって、いたよ」

そういうやりとりを聞いていたAさんの友人が、

「ちょっとおばさん、あの、昨夜最初に声聞いた時、どんな声が聞こえたって言いましたっけ?」と聞く。

「だからあんたたちの演奏にまぎれてね、いやーっ、とか、あついっ、とか、燃えるうっとか、凄い絶叫が……」

その途端、Aさんも友人も、そしてお母さんも、ゾッと髪の毛が逆立った。

シェアする

フォローする