ほくろの男(長野県) | コワイハナシ47

ほくろの男(長野県)

旅行会社に勤めるBさんの話である。

Bさんの母方の実家である長野県北部の山間の村では、今から三十年ほど前までは土葬が普通であったそうだ。

彼が小学二年生のとき、祖父が老衰で亡くなり、先祖代々の墓地に埋葬されることになった。深く掘られた穴に棺が入れられ、各々スコップで土をかけていく。Bさんも同じように持たされ、棺に入った祖父の顔の辺りに土をかけていった。

と、そのとき、三十代前半ほどの男がBさんに近づいてきた。小鼻脇のほくろが目立つ、見たことのない顔だった。男はポケットから小さな木炭のようなものを取り出して、Bさんに見せた。

「ほら、祖母さまの骨さ。この穴掘ってるときに出てきただ」

眼の前のそれは、黒く土にまみれて所々苔むしていた。

「こういうのはな、こうするといい」

手で簡単に土を払い、男はそれを口のなかに入れた。飴玉のようにそれをしゃぶる。

思わぬことに眼を疑った。それが異常な行為であるのは、子ども心にもわかった。

気味が悪くなり、その場から離れると、ひとりで母親の実家に逃げ帰った。

このことは長く誰にも話さなかったそうだが、十年ほど前、ふと思い出して両親に漏らすと、母親は怪訝な顔をして、

「お祖母ちゃんの骨って、そんなわけないわ。あんたはまだ子どもだったから死んだことにしていたけどね、あのひとは私を産んですぐに、近所の悪い男に唆されて駆け落ちしちまったんだ。だから、あのお墓には入ってないのよ」

生きているのか死んでいるのかも、わからないそうだ。では、男が口に入れたのは別のひとの骨だったのか。

祖父の墓は新しく掘った穴で、その際は母親も立ち会ったそうだが、古い骨などひと欠片かけらも出てこなかったという。それに穴を掘ったのは親戚の男衆だけで、そんな男など、その場にはいなかったと母親は断言した。

しかし男の特徴をいうと、ひどく愕いた様子で、

「そういや、母ちゃんと駆け落ちした男も鼻の横に大きなほくろがあったなァ。キザないやらしい眼をした男だったわ」

だが、その男が生きていたら優に九十歳は越えているだろう、ということだった。

シェアする

フォローする