東公園(福岡市博多区) | コワイハナシ47

東公園(福岡市博多区)

〜元寇に纏わる話〜 福岡市博多区

生の松原での出来事から数週間後の話。

当時同じ学校の仲間とバンドを組んでいたセイメイさんは、秋の文化祭に向けて練習に励んでいた。

その日はセイメイさんの部屋に3人で集まって話し合いをしていたのだが、ある程度話がまとまったところでバンドの練習でもしようかという事になった。

時刻は0時をまわっていたため、それなりに気を使ってはいたのだが、やはり当然のように隣室から苦情が入り、部屋での練習は続行不可能となってしまった。

しかし、本番も迫ってきているし、このまま帰ってしまうのももったいないという事で、近所の東公園に場所を移して練習を再開することにした。

東公園は繁華街から近いという事もあり、深夜にも関わらず多くの人が行き交っており、外国人が多いのか聞きなれない言葉も耳に入ってくる。公園内は綺麗に整備されており、街灯もいたるところに設置されているおかげで練習にはちょうど良い。

広い公園なので、しばらく歩き回りながら良い場所を探していると、公園の一角の小高い丘が目についた。丘の上には大きな像がそびえ立っており、一点を力強く見つめている。

「あの丘が良いっちゃない?」

「そうやね。明るいし」

階段を上ったすぐ先にある大きな像はライトアップされており、その周辺なら人は上がってくることも少ないだろうし、何よりライトの明かりがあるので支障なく練習に打ち込めると、3人は嬉々として階段を駆け上がり、その上部を占拠した。

3人の予想はあたり、階段を上ってくる人間はほとんどおらず、2時間ほど練習に集中することができた。そのままノリにノッて演奏を続けていると、ボーカルの井上さんが急に歌うのをやめて焦りだした。

「ヤバイヤバイ! あれ見ろ!」

セイメイさんとギターの立道さんも演奏をやめ、井上さんの指差す階段下を見ると、ホームレスのような恰好のおじさんが10人ほどゆっくりと階段を上ってきている。

「俺らがうるさいけん、ホームレス怒らせたっちゃん!」

気の弱い井上さんはすでにパニックになっている。像のある丘から降りるには、目の前の階段を下るしか道はないのだが、そこにはギラついた眼のホームレス集団。

「うるさくしてすみませんでした! もう帰りますんで!」

冷静に許しを乞うが、相手は聞く耳を持たずに黙々と距離を縮めてくる。

「これ強行突破するしかねーぞ!」

「そうやな」

3人急いで楽器をまとめると、目前に迫った異形の集団に向かって走り出した。

相手の動きは遅く、掴もうとはしてくるのだが、避けながらだと難なく階段を下りることができた。しかし、階段を下りて公園を抜け出そうにも、どこから湧いてきたのかそこら中にホームレスが待ち構えており、逃げている途中でバラバラになってしまった。

公園から無事に逃げ出したセイメイさんだったが、残りの2人のことが心配だ。立道は大丈夫だろうけど、井上の奴はパニクっていたし、もしかしたら捕まって暴行を受けているかもしれない。そう考えると気が気でなく、鼓動の高まりを感じながらも公園へと戻ることを決意した。

園内に入ると、先ほどまでいたホームレス集団は嘘だったかのように1人も姿が見えない。そこら辺にいるのはジョギングだったり、デート中のカップルだったりと、いたって普通の光景だ。まるでキツネにつままれたような気になりながらも園内を歩き回っていると、同じようにキョロキョロとあたりを見回しながら歩いている立道さんを見つけた。

「立道! お前大丈夫やったとや?」

「俺は大丈夫やけど井上は一緒じゃないと?」

「わからん! あいつ捕まったかもしれんな。2手に分かれて探そう」

もう20年くらい前の話である。携帯電話なんて普及していないので、こういう場合は連絡の取りようがない。

30分ほど探し回っていると、立道さんが叫びながら走ってきた。

「セイメイ! 井上おったぞ!」

急いで立道さんの後ろを着いて行くと、街灯の無い暗い草むらへと入っていく。その草むらの中に、衣服がボロボロに破け、足から血を流した井上さんが倒れていた。

「大丈夫や?」

「うーん、足が痛い……」

井上さんは意識朦朧いしきもうろうとした状態で、先ほど起こったことを聞き出そうにも「覚えてない」の一点張り。とりあえず家に連れ帰って介抱しようと立たせると、ドスンと崩れ落ちた。

「足が痛い。力入らん……」

「足折れとうっちゃないとや?」

明日の朝一で病院へ連れていくことにして、その日はなんとか2人で抱えてセイメイさんの部屋まで運びこんだそうだ。

翌朝、朝一で病院まで連れて行ったそうだが、診断の結果足の骨が折れていた。昨晩何が起こったのか聞き出そうとするも、井上さんは例の集団にあってからの記憶がすっぱりと抜け落ちており、医師曰く、多分頭を殴られたことによる軽い記憶喪失だろうとのことだった。

症状も落ち着いてきたころ、警察に被害届を出しに行ったのだが、未だにこの件に関する連絡はないそうだ。

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