遊んではいけない丘 (福岡県築上郡) | コワイハナシ47

遊んではいけない丘 (福岡県築上郡)

この話は、「リアル都市伝説」というイベントプロダクションを運営している、セイメイさんから聞いた話だ。

セイメイさんの実家近くには、近隣住民から「遊んではいけない」と言われている小高い丘があった。

6月になるとその丘にはユリが咲き乱れ、一面真っ白で幻想的な風景になるのだが、まるでその丘の存在自体が無いことになっているかのように、誰も近づこうとはしなかったそうだ。

また、夜になると、落ち武者や馬の生首が出るという噂もあり、気味悪がられていた。

その丘に、当時小学生だったセイメイさんは、1度だけ興味本位で遊びに行ったことがある。

そこにはあまり人が来ないことを知っていたため、むしろ「秘密基地を作るにはちょうど良い場所やね!」なんて言いながら、期待に胸を膨らませて丘を登って行った。

道なき道を登り始めて気づいたのだが、日頃ほとんど人は来ていないはずなのに、草は意外にもキレイに刈り揃えられていて、子供心に、(たまに人が来て土地の管理をしているのだろうなぁ)と思ったという。

丘の頂上あたりに着くと、早速周りから木の枝なんかを集めてきて、秘密基地の制作に取り掛かったのだが、そこで友人の顔色が悪いことに気付いた。

「お前大丈夫や? どうしたん?」

「わからんけど、なんかフラフラする」

友人は真っ青な顔をして、地面に塞ぎ込んでしまった。心配して友人に近づくと、手の指から血がポタポタと滴り落ちている。

(大変だ!)

心配して友人の手を掴むと、なぜか自分の指からも血が流れ出ている。

さっきまで木の枝を運んだりしていただけで、特に怪我をするようなことはしていなかったのだが、血は止まる気配もなく、ポタポタと流れ続けている。

そして、その血は不思議なことに爪の付け根から流れていて、傷口も見当たらなければ痛みも全く感じない。

(このままやったら、友達と同じように倒れてしまう!)

セイメイさんは軽いパニックに陥りながらも、友人を抱えて丘の下まで連れて行き、近くで畑仕事をしていた老婆に助けを求めた。すると、

「あの丘で遊んどったんか!?」

最初こそ驚かれたものの、指先から血を滴らせながら、涙目で助けを求めるセイメイさんを見て老婆はこう言った。

「そうか……あの丘には入ったらいかんということしかわからん。今わかる人を呼んでくるから、丘に戻って待ってなさい」

そう言うと、老婆はどこかへ歩いて行ったので、セイメイさんは友人と2人で丘の麓ふもとに座り込んで待つことにした。

しばらくすると、どこからか軽トラックが走ってきて2人の目の前に停まった。中から降りてきたのは1人の老人で、不安そうな顔をして見つめる2人に向かって話しかけてきた。

「もう大丈夫。何も言わんでえぇ。後ろついてこい」

そう言うと丘に向かって歩き始めた。

最初に丘を登った時は、そんな道があることには気づかなかったそうだが、老人は細い獣道を慣れたように進んで行き、頂上付近にある『石で作った小さな家』のようなものの前で立ち止まった。

「今からここに手を合わせるから、お前たちも同じようにしなさい。ここからは何も喋っちゃいけないし、帰りは後ろを振り向いてもいかんぞ」

そう言って、老人は静かに手を合わせた。セイメイさん達もその『石で作った小さな家』に向かって訳も分からずに手を合わせていると、老人はゆっくりと後ろを振り返り歩き始めたので、2人もそれに続いてようやく丘を下りることができたそうだ。

丘を下りると、老人は話し始めた。

「あの丘はな、あんたたちも知っとる通り誰も近づかん。だからって、ほったらかしにしとくわけにもいかんから、ワシがたまに草刈りに来て祠に手を合わせとる」

「祠って、さっき手合わせた石で作った家のこと? あれなん?」

「あれはこの地で亡くなった者の魂を祭っとる。ワシも詳しいことまではわからんが、もうここで遊んじゃいけんよ。あぁ、怪我は大丈夫か?」

そう聞かれ、ハッとして手を見ると、服に血の跡は残っているものの、出血は止まっており、友人の具合も良くなっていた。

2人が大丈夫そうなのを確認すると、老人は車に乗り込み、またどこかへ行ってしまった。

それ以降、少年時代のセイメイさんは、その丘で遊ぶことは1度もなかったそうである。

ここからの話は、丘に行って奇妙な出来事が起こってから、20年ほどたった頃の話だ。

久しぶりに実家に戻ったセイメイさんは、ふとした拍子にあの丘のことを思い出し、地元の図書館であの丘周辺の歴史を調べたそうだ。

それでわかったことが、丘の周辺というのは元々平地だったそうだが、400年ほど前に周辺一帯で歴史的な戦があり、大量の人や馬の遺体が散乱した。そして、その遺体をきちんと弔とむらう事もなく、1か所にうず高く積み上げて丘ができた。近年に入ってからは、屠殺場の廃棄場として、その丘にはさらに骨などが積み上げられたそうだ。

それを知ったセイメイさんは、無数の屍を積み上げてできた丘の、その上で遊んでいたことを思い出し、恐怖心と申し訳なさが込み上げてきた。居ても立ってもいられなくなり、丘に向けて車を走らせると、遠くに小さな小高い丘が見えてくる。あの頃と変わらずに、丘はそこにひっそりと佇んでいた。

車を止め、昔よりも草に覆われた獣道を勘頼みで登っていくと、まるで時が止まったかのように石積みの祠は残っていた。静かに手を合わすと、振り返ることなく丘を下り、帰路に就いた。

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