ひとりかくれんぼ(福岡県) | コワイハナシ47

ひとりかくれんぼ(福岡県)

「ひとりかくれんぼ」とは、2006年ごろにネット掲示板「2ちゃんねる」で詳細な方法が紹介され、実際に試した人々から怪現象が起こったなどという体験談が書き込まれて、広く知れ渡っていった降霊術の一種だ。

最近でも動画サイトには、いくつものひとりかくれんぼの動画が上がっており、その人気は一昔前に大流行したこっくりさんを凌ぐ勢いだ。

ネットの動画では、奇怪な現象が発生したと騒いでいる様子が映し出されているが、私の今までの経験上、それらの大半はインチキだと考えていた。

実際に、心霊スポットに行ったからと言って幽霊が出ることなんてほとんどなければ、憑りつかれたことなんて1度もない。だからと言って霊はいないのかと聞かれると、私はいると思っている。

しかし、霊というものは実際に人前に姿を現すことは非常に稀で、それらを撮影しようというのは、対馬に行き、絶滅危惧種であるツシマヤマネコを撮影するのと同じか、それ以上に難しいことだと考えているのだ。

なので、動画サイトの映像はほぼ全て作り物だろうと思いつつも、もしも本当にひとりかくれんぼによって簡単に霊を撮影できるのなら、こんなにおいしい話はない! と期待を膨らませて、私も実際にひとりかくれんぼを行うことにした。

〜ひとりかくれんぼのやり方〜

『用意するもの』

・手足のあるぬいぐるみ・米・刃物・塩水・縫い針・縫い糸(赤)・爪切り

・下準備として、人形の綿を抜き、詰め物を全て出して代わりに米と自分の爪を入れて縫い合わせる。隠れ場所を決めておき、そこに塩水を用意しておく。人形の名前はあらかじめ決めておく。

『やり方』

・午前3時になったら以下の順に行動する。

・ぬいぐるみに対して「最初の鬼は○○(自分の名前)だから」と3回言った後、浴室に行き、浴槽にぬいぐるみを入れる。

・家中の照明を全て消してテレビのスイッチを入れ、(砂嵐の画面)目をつぶって10秒数える。

・刃物を持って風呂場に行き、「○○(人形の名前)見つけた」と言って刃物で刺す。

・「次は○○(人形の名前)が鬼だから」と言って、自分は塩水のある場所に隠れる。

『終了方法』

・塩水を少し口に含んでから出て、ぬいぐるみを探して、コップの残りの塩水、口に含んだ塩水の順にかけ、「私の勝ち」と3回宣言して終了となる。

以上が、ひとりかくれんぼのやり方である。

人形が鬼で、自分が隠れている間に様々な怪現象が起こると言われている。

普通の家でやっても面白くないということで、福岡3件、佐賀1件の廃墟に目星をつけて、それぞれの廃墟にカメラ4台を持ち込み、撮影しながらのひとりかくれんぼに挑んだ。

まずは、惨殺小屋と呼ばれる廃屋での撮影から始まった。

竹藪の中で静かに朽ち果てているその廃屋は、まるでそれ自体が妖怪のような異様な空気を纏まとっている。

こういった場所では、崩壊の危険があるので足の踏み場1つにも注意が必要だ。

恐る恐る足を進め、浴室の場所を確認すると、早速ひとりかくれんぼの準備に取り掛かる。

3台のカメラをそれぞれ「浴槽」「砂嵐」(砂嵐はノートパソコンから流した)「塩水」を置いた隠れ場、アクションカメラは自分の頭に着けて、人形の下準備風景から撮っていく。そこまで撮り終わると、私以外のメンバーは外に出て、私1人でひとりかくれんぼを開始する。

「まずは濱が鬼だから! まずは濱が鬼だから! まずは濱が鬼だから!」

ボロボロの廃屋の中に私の声だけが響く。隣の部屋に移動して10秒ほど目を瞑つむった後、人形を置いている浴室に向かう。

「テディ(人形の名前)見つけた!」

そう言うと、カッターナイフで人形をブスリと刺す。

「次はテディが鬼だから!」

ここからが一番怪現象が起こると言われている時間に入る。玄関前の靴箱に体を潜り込ませると、何か起こらないかと息を押し殺しながら待った。時折、パキン、カタンと妙な物音が聞こえるのは、ただの家鳴りだろうか?

8分ほどたったところで、これ以上は何も起こらないだろうと判断し、人形のところに向かう。口に含んだ塩水を人形に吹きかけると、終了の言葉を発する。

「濱の勝ち! 濱の勝ち! 濱の勝ち!」

これにて1回目のひとりかくれんぼは無事終了だ。なにやら気味は悪かったものの、特に怪異は起こらず、あとは家に帰ってから4台のカメラで撮った映像を確認するだけだ。

帰宅後、居ても立っても居られない私は、疲れた体に鞭を打ち、カメラをパソコンに繋ぐと、先ほど撮った映像の確認を始めた。

1台目、2台目、3台目、4台目、そこには、ただただ崩壊しかかった部屋と私が動き回る姿が映し出されているだけで、これといった怪現象は確認できなかった。まあこんなものだろうと最初から思ってはいたのだが、たった1回やってみただけで判断するのは早すぎる。

その後も、1日置きくらいの間隔で、様々な廃墟でひとりかくれんぼを続けたのだが、4回目が終わった時点で怪現象は1度も起きなかった。

この時点で、ひとりかくれんぼに使った4体の人形は、全て家の外に置いている大きなゴミバケツの中にまとめて入れていた。本当は早く捨ててしまいたかったのだが、ゴミ出し日を1回逃してしまっていたため、次のゴミ出し日が来る頃には、バケツの中の使用済み人形は4体になってしまっていたのだ。

怪現象は起きなかったのだが、降霊術に使った人形を置いておくのも気持ち悪いもので、ようやくゴミの日の夜になると、私は一刻も早くこの人形たちを手放したい一心で、早く玄関前に出しておいてしまおうと動き出した。

ゴミ袋に家中のゴミをまとめると、外に出て人形が入っているバケツに近づく。バケツのふたを開けて、人形を取り出そうとしたその時、

「ケケケケケッ!!!」

人形が笑った。

私は気づかないふりをして4体をゴミ袋に入れると、外に放り出した。

多分、今頃はもう灰になっているはずだ。

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