連鎖(福岡市中央区〜飯塚市内野) | コワイハナシ47

連鎖(福岡市中央区〜飯塚市内野)

私の友人に、恭介という元プロボクサーがいる。

今では世界を股にかけて、ボクシングのコーチや、プロモーターとしてのスキルを磨くべく、日々挑戦し続けている熱い男だ。

そんな彼が、10代の頃に不思議な体験をしたのだという。

ある年の夏、雨が降り続き、外出できない日が続いていたそうだが、ようやく天気予報に晴れマークを見つけた恭介は、友人2人に連絡を取ったそうだ。

「明日天気よさそうやけん、ドライブ行こうぜ」

当時、恭介は中古のセダンを買ったばかりで、暇があれば仲間を誘ってドライブを楽しんでいた。今まではずっとスクーター生活で、それはそれで楽しかったそうだが、車の快適さを知ってしまうと、もうスクーターには戻れなかったようで、バイクは売り払ってガソリン代の足しにしたのだという。

まず目指したのは、福岡市内を360度一望できる夜景スポットである「南公園西展望台」だ。

仲間と下らない話をしながらのドライブは最高に楽しいもので、その日も車内の盛り上がりはすぐに最高潮に達した。話に夢中になりすぎたせいか道に迷ってしまい、展望台近くにある丘をぐるぐるとまわってしまっていたそうだ。

しばらく車を走らせていると、仲間の1人が指をさしながら声を上げた。

「おい、あそこ見ろ! 警察おるぜ」

別に悪いことをしていたわけではないし、怪しいものを持っていたわけでもないのだが、車内は静まり返ってしまった。当時、少しヤンチャなところがあった3人は、警察と聞くと身構えてしまう癖があったようだ。

車の速度をグッと落として指のさされた方を見ると、そこにはフェンスがあり、その裏側には水色のシャツに紺色のベストを着た警察官が立っている。

「あんなとこで何しようとや?」

取り締まりだとしたら、数台の警察車両があるはずだし、1人で来たにしても、パトカーかバイクが付近にあるはずだ。付近には車両が見当たらないどころか、その警察官は、真っ暗なフェンス裏にポツリとライトも点けずに立っており、身動き1つしない。

何やら違和感を覚えたが、それほど気にすることでもないだろうと車を進ませ、無事に南公園西展望台に到着した。「女の子だけで来とったらナンパしよう」なんて甘い夢を抱いていたのだが、蒸し熱い展望台には人っ子1人おらず、男3人で軽く語り合うと、すぐに次の目的地を目指したそうだ。

次に目指したのは冷水峠で、展望台から約30kmほどに位置にあり、心霊スポットとも呼ばれている。

冷水峠は、延長2891mの冷水トンネルを有する新道である『冷水道路』と、急カーブと急勾配で峠を越える旧道『国道200号』の2通りの道があり、恭介が選んだのは旧道の方だった。

江戸時代には長崎街道がこの峠を通っていたそうで、『九州の箱根』と呼ばれるほどの難所だったということも、この場所が心霊スポットと呼ばれるようになったことに関係があるのかもしれない。

走るにもちょうど良いし、ついでに幽霊でも出たら面白いということで、カーステレオの音量を上げ、ワイワイと騒ぎながら旧峠に突入したそうだ。グネグネと曲がりくねった道は何とも刺激的で、タイヤの軋きしむ音を響かせながら走り続けると、途中で道の脇を、白い服を着て腰の曲がったお婆さんがフラフラと歩いている。対向車は来ていなかったため、避けようと大きく蛇行してお婆さんの脇を走り去った。

「もう2時やぞ? こんな時間に年寄りが歩くか?」

「ボケとうっちゃないとや? でも、この峠は車スピード出すし危ないな」

ヤンチャとは言っても、恭介は人情味のある男で、このままほったらかしにするのも気が引けた。

「峠折り返して、まだ歩きよったら声かけてみようか」

またスピードを上げて峠を走り抜けると、すぐにUターンして先ほどの現場を目指す。10分もしない内に現場へと近づいてきた。

「ここら辺やったよな?」

友人2人に声をかけると、スピードを落として窓の外に目を向ける。ガードレールがゆっくりと流れていく中に、何やら目立つものがある。

先ほどの場所にはお婆さんがいない代わりに、花束と飲み物がお供えしてある。

誰も何も言わなかったそうだ。車は速度を上げて走り出し、見る見るうちに峠を引き離した。

しばらく走ると、点滅信号が点在する一本道に入った。信号にぶつかる度に、速度を落として左右の安全を確認する。数機目の信号機を目前にして、ゆるやかにブレーキペダルを押し込むと、

ガッタンガタガタガタ!

車が大きく揺れて、車内は騒然となった。

「お前なんか轢いたとや?」

「轢いてねーよ! わからん!」

恭介は焦りながらも、ブレーキペダルから足を離す。車は何事もなかったように、クリープ現象でゆっくりと進んで行く。改めてブレーキペダルを踏みこむと、スッと車は停まった。壊れてはいないようだ。

「何やったとや今の?」

不安気に呟つぶやきながら、視線を前に移すと、信号機の真横に真っ赤な鳥居が見える。そこは神社の前だったのだ。

「うわっ! 神社やんけ?」

それはまるで、『何かが激しく降りた』か『何かが激しく乗った』かのような揺れだったそうだ。

「そこからはちゃんと帰れたっちゃけど、そんな変なことあったの、あの日だけっちゃんね。何でやろ?」

「その日が、知り合いか親族の命日やったとか?」

私がそう問いかけると、恭介は膝を叩いた。

「あっ、あれ盆休みのことやった!」

やはり、お盆にはあちらの世界の方々が帰ってきているのだろうか?

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