黒い塊 (福岡市中央区) | コワイハナシ47

黒い塊 (福岡市中央区)

私の知り合いに、自称霊感が強いという花田という男がいる。

私が怪談蒐集をしていることも知っているので、「今日はどこどこで人影を見た」や、「金縛りにあって白い服を着た女に襲われた」なんてことをよく教えてくれるのだが、私自身は霊感なんてものはないし、そんなにしょっちゅう霊が見えているのかは半信半疑だったので、軽く聞き流していた。

そんな花田が、最近ジョギングを始めたのだという。

昔はサッカー部に所属しており、そこそこのマッチョだったというが、現在のでっぷりとした腹からそんな姿は全く想像できない。

場所は、花田の家の近くにある大濠公園という全国有数の水景公園で、池の周辺約2kmの周遊道、野鳥の森、児童遊園、能楽堂、日本庭園等を配した市民の憩いの場である。

ジョギングブームの昨今において、大濠公園はその聖地であるかの如く、昼夜問わず行きかう人でごった返すような状況になっている。

「お前も良くあんな人が多いとこ行くな……」

「いや、可愛い姉ちゃんおったほうがやる気出るやろ。あっそういえば、大濠公園でも変なもの見たぜ」

(また始まったよ……)

いつもの与太話かと思いうんざりしたのだが、次に口を出た花田の一言で私はフッと引き寄せられた。

「ドーム型の遊具があるとこあるやろ? あそこで変なもの見たっちゃんね」

「えっ? どんなの?」

「走り終わって公園で休憩しとったら、ドームの中から真っ黒な塊がはい出して来たっちゃんね。さすがに、俺も怖くなってすぐ帰ったよ」

「お前、あそこで何があったか知っとうとや?」

「何がって? 何かあったと?」

「あそこ、数か月前にドームの中で焼身自殺あっとうやん……」

「うそやん! それマジで言いようと?」

「ネットで調べたらすぐ出てくるよ」

「じゃあ俺が見たのって……」

この男、本当に見えているのかもしれないと思うようになった。

シェアする

フォローする