ラブホテル(福岡市中央区) | コワイハナシ47

ラブホテル(福岡市中央区)

私は以前、苅田町にある工場で働いていたのだが、その時にいつもつるんでいたシノという男がいる。

当時は2人とも会社の寮に住んでいて、本来は部外者立ち入り禁止なのだが、シノは毎週休みになると彼女を寮に連れ込んでおり、私も合わせてよく3人で映画鑑賞などをして楽しんでいた。

しかし、寮には大浴場しかないので、夏場でも彼女はシャワーすら浴びることができない。そのため、シャワーも浴びることができるし、彼女と2人でゆっくり過ごしたいという理由で、シノはラブホテルを利用することがたまにあった。

ある時、天神でショッピングをした帰り、苅田までは距離もあるし、付近で良さそうなラブホテルに泊まろうということになったそうだ。

たまたま見つけた建物の外観は新しく、艶つややかなネオンに包まれて幻想的な雰囲気を漂わせている。

受付を済ませて部屋に入るなり、彼女はヒッと声を上げ、体をビクンと跳ねさせた。

一体どうしたのかと聞いてみると、部屋に入ると同時に、すれ違うようにして誰かが出ていったという。

そうは言っても、横にいたシノは何も見ていないし、彼女も自分がおかしなことを言っているというのはわかっているようだが、『すれ違う感覚』があまりにもリアルだったために、驚いてしまったのだという。

シノも彼女を見ていて気味の悪さは感じたものの、普段から電話口で、1人で部屋にいるシノに向かって、

「他に誰かおる? なんか声聞こえるっちゃけど?」

なんて言うことが多々ある彼女だったため、毎回深刻に受け止めていては、こっちが疲れるだけだと、なるべく気にしないようにしていた。

そこからはシノの頑張りもあって彼女の機嫌も戻り、シャワーを浴びると2人で眠りについた。

「シノくん……ねぇ、シノくん!」

眠りについてからどれくらい経ったかはわからないが、彼女に呼びかけられながら体を揺さぶられ、目が覚めた。

眠い目を擦りながら「どうした?」と尋ねると、彼女は泣きそうな顔をしている。

「音が聞こえる!」

耳を済ましてみると、たしかにどこかからガチャガチャと音が聞こえている。

(これは気のせいなんかじゃない!)

今までは彼女の勘違いだと思っていたものが、今自分の身にも現実として降りかかってきている。すぐにでも部屋から逃げ出したかったそうだが、今まで強がってきた手前、ここで弱いところは見せられないと、部屋の電気を点けて立ち上がった。

ガチャガチャガチャガチャ!

音はどうやら浴室から聞こえてくるようだ。

恐る恐る音のする方に向かっていくシノの後ろを、彼女が腕を掴んで付いていく。浴室まであと2mほどということころで、完全に足が止まってしまった。

ガチャガチャガチャガチャ!

電気のついていない真っ暗な浴室のドアノブが、まるでそれ自体が暴れているかのように、左右に動き回っている。

(うわぁ、めちゃくちゃ怖えぇ!)

後ろをチラリと振り向くと、彼女は泣きそうな顔をしてガクガク震えている。選択肢は『行く』しかなかった。

勇気を出して近づき、浴室の電気スイッチを押す。

カチッ。

そしてすぐさまドアノブに手をかけ扉を開け放った。

すると、先ほどまでの音は嘘だったかのように止み、部屋は静寂に包まれた。浴室の中は静まり返っており、何の姿も見えない。

半ば放心状態になりながら、2人してベッドに戻り(ここ、もう出ようか)なんて話していると、

ガッチャッ。

今度は風呂場のドアが開け放たれた。

もうこれは無理だと、荷物をひっ掴んで駆け出し、彼女は靴も履かずに部屋を飛び出した。シノも後を追い、2人分の靴を手に持って部屋を出ようとした瞬間、

「ヴーーギィィーー!!」

女の唸るような声が部屋中に響いた。

後で調べたところ、このホテルでは以前、派遣型風俗店に勤める女性が絞殺される事件が起こっていたそうだ。

あの時の部屋が、事件のあった部屋なのかどうかはわからないという。

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