将校会館(東京都千代田区) | コワイハナシ47

将校会館(東京都千代田区)

ある雨の日、絵本作家のTさんが東京九段に近い近代美術館前で、タクシーを拾った。

乗り込んで、あるところへ行ってくれと言うと、運転手が嫌そうな顔をする。

「何で?何が嫌なの?」と問うと「だって、雨降ってるじゃないですか。こんな日、嫌なんですよ、あそこ通るの」と言う。

「何かあったの?」と聞くと、ある夜中、その道を通った時の話をはじめた。

雨は降っていなかったが、靄もやが出ていた。

そこに通称〝将校会館〟と呼ばれる戦前からの煉瓦造りの古い建物がある。その前がちょうどカーブになっているので、ヘッドライトがぐるっと建物を照らした。

すると、軍服に身を包んだ人たちの一団が見えた。

彼らは整然と並んで、皇居の方を向いて敬礼していたという。

彼らの軍服姿からして、士官クラスの集団だったように見えた。

それが恐ろしくて、こういう日にはそこを通りたくないというのだ。

しかたなくTさんは少しばかり遠回りをして、目的地へ行ってもらったという。

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