りかこ(神奈川県 三浦半島) | コワイハナシ47

りかこ(神奈川県 三浦半島)

このエピソードはテレビなどでも紹介され、有名になったものだ。

我々は偶然その事件の三日後に取材することができた。

それは、呪いのビデオを題材にした、あの大ヒット映画のパート2の撮影中に起こったものだ。

三浦半島で撮影を行った時のことだという。

シナリオでは〝賽の河原〟とされた場面。

撮影の準備に、スタッフたちが海岸にある洞窟の中に卒塔婆やお地蔵様をセッティングしていた。と、洞窟の中にひと抱えもあるような岩がある。どうしてもこの岩は邪魔になるので移動させることにした。何人ものスタッフが岩に手をかけると、ズズッと横に動いた。自然石ではなく、底が切り取られたように平らで、もうひとつの平たい岩の上に意図的に置いてあったものだとはじめてわかったという。

さて、撮影前、スタッフたちが作業していると、後ろから誰かに呼び止められる感じがして振り返る。が、誰もいない。しばらくしてまた、呼び止められる。誰もいない。そんなことが続いた。

本番となった。夜、懐中電灯を片手に主人公の女性が老人に賽の河原を案内されるシーン。

「ようい、ハイ!」と監督の号令が響く。

役者さんが洞窟の奥に向かっていく。画面の手前は海。

と、「ちょっとしゃべんないで」と、録音担当のKさんが振り返ってスタッフをにらみつけた。

「えっ、誰もしゃべってませんよ」

そう、本番中にしゃべるようなスタッフはいない。

「いや、声がした。マイクがそれを拾ったよ」とKさん。

「しゃべってませんてば」と、誰もがそれを否定する。

じゃあ、とその録音テープを聞いてもらった。

みるみる現場のスタッフたちの顔色が変わった。

何日かして、スタジオでの撮影となった。

女優のYさんがセットに入った時、録音のKさんから「Yさん、ちょっとこれ聞いてみてくださいよ」と、何の予備知識もなくそのテープを聞かされたという。

「なに?」とヘッドホンを耳につけた。

波の音がする。

「海の音ね」

このシーンにセリフはない。ただ、マイクは海の音を拾っているだけだ。

なのに周りがざわざわしている。海の底から大勢の呻うめき声が響いているような感じ。

ゴポゴポゴポ……、ゴポゴポゴポ……という音がする。

人が口を開けたまま海に沈んでいくイメージが湧く。

口の中に海水が流れ込み、苦しそうに喘あえいでいる……。

「なに、これ……気持ち悪い」

Yさんがそういった直後、ヘッドホンを通じて男の声が聞こえた。

「りかこ」

この映画で刑事役を演じていたIさんもこれを聞いた。

Iさんは最初、海の底で大勢の人間が何かもしゃもしゃと話しているような声が聞こえたという。何を言っているのかはわからない。ただ「……でしょ」「……ねっ」と言こと葉ば尻じりだけは聞こえる。

「なに、これ?」

と思った直後に「りかこ」。

それは女性の名を呼ぶ若い男の声にしか聞こえない。

「実はねIさん、これ三浦半島で撮ったシーンなんですけどね……」と、例の撮影中のことを聞かされた。

マイクは海面を向いていて、人の声を拾うような状況ではなかった。また、確かに本番中にしゃべるようなスタッフはいないし、そんな事実もなかった。

それを聞いたIさんは(それでか……)と思いあたることがあったという。

このシーンが三浦半島で撮影されていた時、出番がなかったので家族とバーベキューパーティをしていた。たまたまそこが同じく三浦半島だったという。その時ふと思い出した。

「そうだ、今日、この近くで撮影やってんだ。ビールを持って陣中見舞いでもするかな……」

そう思った瞬間、頭がずっしり重くなった。

気分が悪くなって、この日はそのまま帰ったという。

Iさんは急に頭が重くなるということははじめてだった。何か、あそこには行くな、と言われていたような気がした。

洞窟での撮影が終わった時、「ひょっとしたらあの石のせいじゃないのか?」と誰かが言い出した。洞窟内にあった、誰かが意図的に置いたとしか思えないあの石のことだ。

「あれは誰かの墓とか、何かを封じた石なのかもしれない。それを動かしたから妙なことが起こったんだ……」

本来なら疲れた身体をひきずって帰るべきところを、スタッフたちは総動員で二時間近くもかけて、その岩を元あったところに戻したのだそうだ。

ちなみに、この映画の脚本家Tさんによると、「りかこ」という不思議な声は、実はもう一カ所に入っているという。

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