メロンの匂い(大阪府) | コワイハナシ47

メロンの匂い(大阪府)

OLのS子さんは、会社の女子寮に住んでいる。マンション形式のその寮は九階建てで、彼女の部屋は二階にあるそうだ。

ある年の春、S子さんのお姉さんが三歳になる姪のJちゃんを連れて遊びにきた。

はじめは自分の部屋に泊まってもらうつもりだったが、ワンルームの部屋に三人寝るのはちょっと窮屈だ。そこで寮長に事情を話し、ちょうど空いていた向かいの部屋を使わせてもらうことにした。

ところが部屋に入ると、いつもは落ち着きのないJちゃんが、ちょこんと正座をして手を合わせると「まんまんちゃん、あん」と言う。

「何してんの?」とS子さんが聞くと、「お地蔵さんがいるの」と言う。

「まんまんちゃん、あん」は家で仏壇を拝む時にする仕草なので、「何だろ、お地蔵さんて」と考えて、あっと思いあたった。

Jちゃんは玄関のドアの前で、ちょっと斜めに座って手を合わせている。その方向の部屋、つまりS子さんの隣の部屋ではつい最近同僚が亡くなっており、それ以来空いたままになっているのだ。

怖くなったS子さんが「お地蔵さんなんていないじゃないの」と言っても、「いる、いる」とJちゃんは聞かない。

「どこにいるの」と言うと、「ここ」とドアを指差す。それはドアのこちら側のことなのか、向こうのことなのかわからない。しかしJちゃんはずっと手を合わせて「まんまんちゃん、あん、まんまんちゃん、あん」と言っている。

「もういいから寝なさい」と、S子さんは無理やり寝かしつけた。

お姉さんもJちゃんの不可解な行動に首をかしげていたが、S子さんは「実は、あそこの部屋で人が死んでいるの」とは言えなかったのである。

翌日は、Jちゃんが楽しみにしているディズニーランドへ行く約束をしていた。

「さあ、行くよ」と部屋を出たが、Jちゃんは廊下に立ち止まって、「おいで、おいで、おいでよ」と手招きしている。見ると、その隣の部屋だ。

S子さんがいくら呼んでも、Jちゃんは「一緒に行こうよ!早く早く!」としきりに手まねきをしている。

「ちょっとお姉ちゃん、この子何してるの?いつもこんなこと言ってるの?」と聞くと「いや、こんなことはじめてだけど……」と姉も首をひねっている。

エレベーターがやって来てもなおJちゃんは「早く、早く、早く来なよ」と、誰かを呼んでいる。

「もう行くよ」と無理にエレベーターに乗せた。

「誰がいるのよ」と聞くと「お姉ちゃんがいる」と言う。

その日はそのままディズニーランドへ行ったが、Jちゃんがどんなお姉さんを見たのかまでは怖くてとても聞けなかったという。

実は隣の住人が亡くなった時、S子さんは休暇を取っていた。

寮に帰ってみると、S子さんの部屋にメロンの匂いがどこからともなく立ちこめていたのだ。何だろうと不思議に思う日が続いた。

数日後、同僚が死んでいたことがわかったのである。

そしてその日を境に、メロンの匂いはぴたりとしなくなったそうだ。

後日S子さんは、Jちゃんが何を見たのかが気になって、お姉さんに何度か電話をかけた。

Jちゃんに聞いてみて、とたのんだのである。しかしいくらたずねても、Jちゃんはかたくなに口を閉ざして答えないという。

ある時電話をかけて「Jちゃんにかわって」というと、いつもは喜んで電話口に出てくるJちゃんの様子があきらかに違う。

まるで質問の内容を察したように、「やだよ、やだよ」と繰り返している。

「何がやなの?」と聞くと「やだよ、何も見てないよ」と答えた。

今も電話にはけっして出てくれない。

その部屋は寮長に全て話しお祓いをしてもらった。

そこは現在も空いたままだそうだが、誰もいないはずのその隣から、今もたまに足音などがするという。

S子さんは、今もその寮に住んでいる。

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