浴槽の中(東京都) | コワイハナシ47

浴槽の中(東京都)

都内のハウススタジオにビデオの撮影隊が入った。

撮影中の作品には組長が死ぬ場面があって、血のりが大量に必要になった。そこで美術さんがひとり、スタジオを汚すといけないからと、バスルームの浴槽の中に入って、ひとつひとつ、血のりの入った小袋を作っていた。

そこに主演俳優のマネージャーEさんがやって来て「おっ、やってるね」と言いながら、そのバスルームを覗いた。

「あちゃーっ」とEさんは思わず声を出した。

女性の美術さんが浴槽の中で黙々と作業をしていたが、Eさんの声にふっと顔を上げて、「どうしたんですか?」と聞く。

「君の隣、いるよ」とだけ言って、あんまり気持ち悪いのでEさんはそこから目を逸そらして外に出た。

彼女が入っている浴槽の中に、人がうごめいていたのだ。

何人いたのかは覚えていないが、手前にいたのは年取った男性で、浴槽の縁に手をかけてこちらを見ている。他の人たちも狭い浴槽に身体を寄せあっているが、風呂を楽しんでいるという雰囲気ではなかった。

その人たちは透けていて、後ろで作業している美術さんのこともよく見えていた。

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