重なった(東京都練馬区) | コワイハナシ47

重なった(東京都練馬区)

新婚のKさん夫婦が練馬区に中古の家を買った。

同じような家がズラリと建ち並んでいたが、一軒だけなぜか長いこと空き家になっていて、価格が安かったのである。

引っ越した初日。荷物を運び入れようと玄関のドアを開けると、(あら、家間違えたのかしら)と一瞬奥さんは思った。

以前、不動産屋と来て即決した時はもっと明るい家だったような気がしたからだ。

しかし、見渡すとやはりこの家。

(やっぱりここよね……)と、ちょっと納得がいかない心持ちだったという。

荷物がどんどん運び入れられるので、今夜からすぐに寝られるようにと、一番最初に布団袋を客間に運んでもらった。

「さてと」と奥さんは布団を押し入れに入れようと、右側の襖を開けようとした。その瞬間、目の前に女が見えた。

(えっ、誰?)と思った時には、その女はもうかき消えていた。

ゾッとした。なんだかそのまま襖に手をかけるのが怖くなって、反対側の左側の襖を開けて、布団を奥に押し込んだ。

その後は何事もなかったが、客間の押し入れを開ける時は必ず左側の襖を開けることにしていたそうだ。なんだかそうしないと、またその女を見てしまう気がしたからだ。

ある夜、ご主人が酔っぱらって帰ってきた。会社の同僚を連れている。

「こいつ、奥の客間に寝かせてやってくれ」と言うので、はいはい、と奥さんは客間に入った。うっかり右側の襖に手をかけた瞬間、ふうーっと部屋が薄暗くなった。えっ、と思わず天井を見上げる。いつもと蛍光灯の型が違う。はっと振り向いた。

あっ!

割木を持ったものすごい形相の男が、今にも殴りかかろうと迫ってくる!

目をつむって思わず体をよけた。

途端に雰囲気が変わる。部屋が明るくなって男の姿もかき消えていた。

(あの女性と重なった途端、わたしは彼女になったのでしょうか?)と奥さんは笑った。

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