広告写真その一(静岡県錦ヶ浦) | コワイハナシ47

広告写真その一(静岡県錦ヶ浦)

ある撮影隊が錦ケ浦付近の岬で、広告のスチール撮影をした。

高い櫓を組んで、その上からカメラマンが俯瞰の図を撮る。

その撮影の真まっ只ただ中なか、とことこっと中年の男がやって来たかと思うと、そのまま崖からポーンと飛び降りてしまった。

自殺。

崖っぷちには靴がそろえてあり、遺書もあった。

撮影はただちに中止された。警察を呼んで大騒ぎになったが、撮影クルーは当事者とは関係がないので、事情を聞かれただけで解放された。

一週間ほどして、ご遺族の方から「ご迷惑をおかけしました」という連絡が入った。「もし、うちのお父さんが写っている写真があるようでしたら見せてほしいのですが」と言う。フィルムはカメラマンが持っている。ロケ場所を変えて撮り直すつもりだったので、預けたままにしてある。しかし遺族からの依頼となれば話は別だ。とりあえずカメラマンに連絡してみた。

すると「でも、いらないんでしょ、あれ」という返事だ。

「実は遺族の方から連絡が入ったんで、一応見てみたいんだ。今から取りに行くから」とディレクターと助手がカメラマンのところへ行ったのである。

「あのね、変なもん写ってるんだけど、ほんとに見る?」

と、カメラマンが怪け訝げんな顔をする。

男が飛び込んだ瞬間が写っている一枚が確かにあった。ディレクターと助手は、それを見た途端、思わずこんな言葉を漏らした。

「何が写ってんだ、これ……」

大きく引き伸ばしてもらい、会社に持ち帰ってスタッフたちと見た。

俯瞰からねらった構図なので、男が飛び込む方向に海原がちゃんと写り込んでいる。その海原がぬめぬめと妙な光を放っているのだ。よく見るとその光は一本一本の棒のようなものが、わらわらと集まってできているように思える。

「棒?違うよ、全部手だよ」

と誰かが言った瞬間、全員ゾッと鳥肌をたてた。

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