三叉路(岩手郡雫石町) | コワイハナシ47

三叉路(岩手郡雫石町)

岩手県の秘境にある温泉に行ったKさんは、「不思議なことがあったんです」と話し始めた。

彼女は、今年(二〇一八年)新卒でとある企業に勤めはじめたOLだ。

今年の大型連休は同期の友達三人と、岩手県の休暇村「岩手網張温泉」で過ごしたそうだ。

そこは、秘境とあって温泉の裏には川が流れていて、周囲に建物がない環境だったそうだ。

旅館に入り、部屋の鍵を受け取ると、荷物を下ろす。

さっそく観光に行こうかということで、部屋を出て、ロビーで地図をみながら今後の予定を話し合っていると、友人のひとりが川を見に行きたいと言い出した。

その意見が採用され、森林浴をしながら、記念に川で写真を撮ろうということになった。

そんな話をしていると、旅館のご主人が話しかけてきた。

「歩き……、ですよね? 携帯電話は忘れずに持っていってくださいね」

と、やけに念入りにお願いされたそうだ。

Kさんたちは、河原を歩いたり、木立ちの中に入ったりして、それぞれ写真を撮って遊んでいた。

それをリアルタイムにSNSにアップする。

そんなことを繰り返して楽しんでいた。

ある程度時間が経って、そろそろ一度、旅館に帰ろうかということになった。

来た道を帰ろうとして、途中、三叉路に行き当たった。

Kさんは(こんな道あったかなぁ?)と思ったそうだが、場の楽しい雰囲気を壊してしまうのに気が引けて、言わなかったそうだ。

友達のひとりが、「たぶん、こっち」というので、みんなついて行った。

ところが、進めば進むほど、あたりは暗く木々に覆われ、人の気配も薄れていってしまった。

本来なら、すでに旅館に着いていて良い時間だ。

それだけ歩いたという自覚はある。

Kさんたちは、焦りながらも先ほどの三叉路に戻ると、選ばなかったもう一つの道に進んだ。

しかし、少し進んだところで、崖に出てしまった。

困り果てていると、友達のひとりが旅館の主人に言われたことを思い出した。

慌てて旅館に電話すると、「あぁ、でしたら河原に降りて川に沿って歩いて来て下さい」と言われたそうだ。

途中まで旅館の従業員さんに迎えに来てもらい、それで無事、旅館に帰れたというわけだ。

あとから旅館の主人に聞いたところ、その三叉路では二十年近く前に高齢者の死体遺棄事件があり、それからというもの、なぜか人が迷う様になったということだった。

しかも、「あれは三叉路じゃないんです。本当は四本の道が交差しているところなのですが、一番太い道が消えてしまうことがあるようです」

と旅館の主人は言う。

また、「置き去りにされた高齢者が寂しくて人を呼んでいるのではないでしょうか」

とも言っていたそうだ。

Kさんは、そのあと、温泉に入ったそうだが、怖い思いをしたせいか、身体がまったく温まった気にならなかったそうだ。

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