長屋の路地(岩手県盛岡市) | コワイハナシ47

長屋の路地(岩手県盛岡市)

岩達くんは、小学校の同級生だ。

盛岡市の町内を歩いている時、久しぶりにばったり出会ったので、夜飲む事になった。

そこで、「最近何してる?」からの「怪談を聞いてまわっててさ」と言う流れで、彼の経験談を聞く事になった。

ちなみに、名前を出せと言うので本名での登場である。

彼が小学校低学年の時の話だそうだ。

図工の課題がなかなか終わらなかったその日、すっかり夜になった帰り路を急いでいた。

彼の家は、長屋が向かい合って建っている長い長い路地の一番奥にある。

いつものように、大通りの歩道から曲がって路地に入る。

路地に入ると、左右に長屋があり、それぞれの玄関が向き合って建っている。

外灯が無い夜のこの時間は、長屋から漏れる灯りを頼りに進む事になる。

路地に入ってすぐ気づいたのだが、路地の入口と自分の家のちょうど真ん中あたりに外灯が見えた。

それは、当時でも珍しい昔ながらの裸電球に傘をつけたものだった。

「あれ?」

と当時は小学生の岩達くんは思ったものの、

「自分にとって困る事は無いな」

と思い、そのまま進む事にした。

外灯の下に来た時。

外灯に照らされた自分がいる白い空間から見て、路地の奥に何か大きなものがいるように思えた。

目を凝らしてその物体を注視すると、それは大きな壁だったそうだ。

「壁……?」

と思っていると、その壁がズズズズッと自分のいる側に動いて来た。

「うわっ!」

と声を出して驚いた岩達くんは踵きびすを返して逃げようとした。

が、何の根拠も無いのだが、この外灯の光から出ない方が良い気がした。

足を止めて振り向くと、壁は尚も同じ速度でズズズズッと近づいてくる。

「うわわわわっ!!」

と更に大声を出して驚いていると、

ガラッ。

と扉の開いた音がして、

「何してるんだ? こんな夜遅くに」

と近所のオジサンが出て来た。

「壁が!」

と言いながらオジサンの方を見ると、もうその時には外灯の光も、外灯そのものも無くなっている事に気が付いた。

路地の奥を見ると、外灯と同様に壁も無くなっていたそうである。

「いや、それはわかったけどさ。なんで外灯の外に出ちゃダメだって思ったのよ?」

「本当にその根拠はわかんないんだよね。そんな気がしただけ、とかさ」

「路地ってあの路地でしょ? あそこって何かいわくがあったっけ?」

「無いと思うよ。そもそもあの長屋って、夜逃げとかはあったけど、自殺とか殺人とか聞いた事もないし」

「今もあるのかな?」

と、私は現場を知っているので行ってみようと思い、岩達くんに聞いてみた。

「あるよ。あるある。だって、まだそこに住んでるから」

と笑った岩達くんの目は笑っていないように思えた。

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