崩れる家(兵庫県) | コワイハナシ47

崩れる家(兵庫県)

「俺が前に住んでた家やねんけどな、一人になると変な声が聞こえてなあ。気持ち悪いんや。いっぺんなあ、こんなことがあったなあ」

彼が移り住んだ家は山の中腹にあり、玄関は二階にあった。阪神・淡路大震災で結構なダメージを受けていたが、まだ十分住めるということで、家族揃って引っ越したのだ。

ただそこは、家の中に一人だけになると、やたらと人の話し声が聞こえる。

それはある休日のこと、彼はリビングで一人、野球中継を見ていた。廊下から、スリッパを履いた誰かが歩くようなパタパタパタパタという音が聞こえてきた。

いつの間にか妻か娘が帰ってきたのかと思ったが、足音は一度聞こえたきり、聞こえてくることはなかった。

その後、トイレに行こうと廊下に出たが、誰も帰ってきた形跡はない。

おかしいなと思いつつ、トイレに入ると、今閉めた扉の向こうから男性の咳払いが聞こえた。驚いて扉を開けるが、誰もいない。そんなことがあったという。

また、別の日のこと。やはり家には彼一人きりだったそうだ。

リビングで新聞を読んでいると、玄関の扉が開いて、廊下を歩いてくる音がした。誰がが帰ってきたのかと思ったが、それっきり音は止んだ。しばらくしてまた玄関の戸が開く音がした。廊下を歩いてくる音、そしてそれが止むと静かになった。

「一体何なんやと。ほんま気色悪い。でもな、そんなことがその日は四、五回あったんや」

その家は十年ほど住み続けたが、老朽化が酷く、引っ越すことにした。

怪異な出来事は住んでいる間中、続いたという。

ところでこの話、どこかで聞いたなと思った私は、彼に聞いてみた。

「すみません、あの、ひょっとしてそこの家って、〇〇の辺りにある家で、親戚の方からタダで譲り受けたとこと違います?」

「え?なんや、なんで知ってんねん?」

「えーと、確か真ん中の娘さんですかね、短髪に細い眼鏡かけてません?」

「なんや知り合いかいな?」

そう、なんとこの男性、春に怪談売買所に来て下さった岡部さんのお父さんだったのだ。(『引っ越し前夜』参照)

岡部さんは、お父さんからは奇妙な体験をしたとは聞いたことがないとおっしゃっていたが、やはりお父さんも体験していたのだ。

私は、どうして家族の方に今語ってくれた体験を話さないのか聞いてみた。

「ああ、そういえば娘もみんなそんな体験したとか言ってたな。でも俺がそんな体験したとか言うて怖がってたら、恥ずかしいやないか」

そう言って、岡部父は笑った。

シェアする

フォローする