小さな存在(大阪市) | コワイハナシ47

小さな存在(大阪市)

「仕事中やったんですよ。営業で車運転してて。ちょうど大阪の中央通りを車で走ってたんです」

信号が赤に変わり、停止する。ふと右側の窓の外を見ると、中央分離帯の茂みの中から小さな四本足の生き物がひょろひょろと現れた。

白く短い毛で覆われた細い胴体に細い足、短く小さな尻尾、頭には小さな二本の角。それは紛れもない山羊だった。

ただ、大きさは子猫ほどしかない。

小さな山羊は中央分離帯の端まで歩いてくるとそこで立ち止まり、まるで餌をねだるかのように、彼に向かって鼻先を突き出した。

「めちゃ可愛いと思って。でも何か分からないんですよ。そんなとこに山羊なんかおらん(いない)やろうし、おった(いた)としてもあんな小さい山羊、やっぱりおらんし」

そこで信号が青に変わり、彼は車を発進させた。

仕事中、何度となくそこを通っているが、山羊を見たのは後にも先にもそれ一度きりである。

「かわいいとか思ってしまったけど、やっぱりあんなん見るのは怖いわ」

そう話す彼の表情は、やはり嬉しそうにも見えたし、困惑しているようにも見えた。

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