狭い運河に浮かぶ船(東京都) | コワイハナシ47

狭い運河に浮かぶ船(東京都)

友人の坂下が住むマンションのベランダからは、運河が見下ろせる。

もっとも、運河とは言っても、近くの川を引き込んだだけの小さなものである。

「プールを二つ繋げたくらいの大きさかな。うちは六階だろ。夜にタバコ吸いに出ると、全体が見渡せるんだ」

そんなとき、ごく稀まれにだが、運河に木船が浮かんでいるのを見掛けることがある。

帆柱こそないが、全体が木組みで作られた大きな和船で、甲板がマンションの三階に届く高さにあるらしい。だが、今まで一度も、甲板に乗員の姿を見たことはない。

そもそも、その狭い運河にどうやって木船を入れているのか、まったく見当がつかないのだという。

「でも、朝になるといなくなってんだよなぁ、あの木船。同じのマンションの住人は、船幽霊だとか言ってるけど……どうなんだろうね、実際」

その木船が現れるとき、決まって潮の香を含んだ夜霧が周囲に漂うのだという。

因みに、坂下の住むマンションは都内にあるが、さほど海から近くない。

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