もふもふ(東京都) | コワイハナシ47

もふもふ(東京都)

都内の商社に勤める良子さんは、毎日、通勤路として日比谷公園内を通っている。

ある晩、広場を横切ると、噴水の脇に「ピレネー犬」が伏せているのに気づいた。

小さい頃から犬が大好きだった良子さんは、立ち止まって遠くから眺めたという。

四、五分ほど『犬見物』をして、そろそろ帰ろうかと木立の緑道へと足を向けた。

その途端、背後で「ちゃ、ちゃ、ちゃ、ちゃ」と軽快な足音が聞えた。

見ると、さっきの白いピレネー犬が小走りでこちらに駆け寄ってきていた。

思わず「おいで~」と声を掛けて、すぐに後悔した。

──近づいてくる動物は、犬ではなかった。

モフモフとした毛並みに、くるんとした巻き角の雄の羊だったという。

その羊は徐々に速度を増して、良子さんめがけて一目散に突進してきた。

あわやぶつかる──その瞬間、羊が身を躱かわして〈フッ〉と空中に掻き消えた。

地面に尻餅をつきながら〈一体なんなの?〉と、唖然とするしかなかった。

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