吉村さんが見た妖怪(東京都) | コワイハナシ47

吉村さんが見た妖怪(東京都)

妖怪その一(東京都)

「一度だけ、妖怪を見たことがあるよ。何て名前なのかは知らないけどね」

現在、家電メーカーに勤めている吉村さんが、大学生の頃の話である。

当時、吉村さんは気の置けない仲間三人と、よくドライブへ出かけていた。

「彼女を連れていくデートスポットの、下見ってのが本音かな。まぁ、ドライブ自体も楽しかったけどね。で、たまに心霊スポットにも行くことがあって」

ある晩、都心から少し離れた郊外の霊園へと向かったという。

そこは広い敷地内を車道が環状に通っている大きな墓地で、夜間でも車で敷地内を回ることができた。

吉村さんは何か面白い場所はないかと、乗車したまま霊園内を散策したという。

すると、いきなり「ドンッ!」と、車内の天井が鳴った。

振り返ると、後部座席の天井で頭をぶつけた友人が、窓の外を指さしていた。

彼の指が示した先には、〈銀色に光る何者か〉がいた。

「何ていうかな、とにかく変な生き物だったんだ。中型犬くらいの大きさなんだけど、全身が薄っすらと銀色に光っていて、頭が異常にデカいんだよ。……それが、斜面になっている墓場の一番上で、こっちを見下ろしていたんだ」

仲間のひとりが、「何だ、あれはっ!?」と声をあげた。

「わかんねえよっ!逃げようっ!」と、車内はパニック状態となった。

そんな中、友人のAさんが「俺、ちょっと見てくるわ」と車を降りてしまった。

仲間に引き留める間を与えずに、ひとりで上り坂を登り始めた。

「……あいつ、大丈夫かよ?」

皆の心配をよそに、Aさんはその奇妙な生き物にゆっくりと近づいていった。

だが、生き物は危険を感じたらしく、坂の向こう側へ逃げてしまった。

ひょこひょことした、操り人形のように愛嬌のある歩き方だったという。

Aさんもそれを追って、坂の向こうへと走って消えた。

──だが程なくして、Aさんが必死の形相で坂道を駆け下ってきた。

そして車に飛び乗るや否や、「はやく車をだせっ!」と叫んだ。

坂を見上げると、銀色に光る生き物が、四、五匹に増えていたという。

互いにひそひそと耳打ちしながら、こちらの様子を窺うかがっているようだった。

「……逃げようっ!」

吉村さんは、慌てて車を走らせたという。

話の途中だったが、「その妖怪がどんな姿か、描いて戴けますか?」とお願いした。

腰を折るようで申し訳なく思ったが、吉村さんが説明してくれた妖怪の姿が、どうにも腑ふに落ちなかったからだ。

彼が取材用のノートに描いてくれたスケッチは、こんな感じだ──

楕だ円えん形の頭に、アーモンドのような白目のない瞳。

顔の中心に鼻梁はなく、削いだように鼻び腔こうが二つ開いている。

極端に身体が撫肩で、メスフラスコに細い手足を付けたような印象だった。

そいつが、墓場の暗闇で薄っすら銀色に光っていたのだという。

「吉村さん……グレイって知ってます?」

「……バンドの?」

「いや、そうじゃなくて」

聞くと、彼はUFO関連のオカルトに興味がなく、殆ほとんど知識がないのだという。

それから〈グレイとは何なのか〉と、小一時間ほど説明することになった。

妖怪その二(東京都)

吉村さんに語って頂いた話には、後日談がある。

それから、四、五年が過ぎた頃だ。

たまたまテレビを点けると、件くだんの霊園の中を有名な大物歌手が歩いていたという。

番組の趣旨はわからなかったが、どうやらバラエティー番組らしい。

気になって観ていると、車道の途中で大物歌手が立ち止まった。

そして、斜め上方を指さして、「あそこに近づいちゃダメ。異界に通じているわ」と言ったという。

驚いたことに、吉村さんたちが〈奇妙な生き物〉を見た、あの坂の上だった。

「正直、俺はその歌手、本当に霊感があるのかって疑っていたんだけど、それを観てからは『この人は本物だ』って見直すようにしたんだ」

因ちなみにその大物歌手は、当時スピリチュアル系のトーク番組で絶大な人気を博していた人である。

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