予言(東京都) | コワイハナシ47

予言(東京都)

都内のガード下で、狭い一杯飲み屋を営む洋治さんから聞いた話だ。

「何年か前なんだけど、ヨっちゃんって常連のお客さんがいてね。いつもカウンターの端っこで、手酌でちびちびやってたなぁ」

他の常連と違って、滅多に人と会話をしない人だった。

その分、酔ってくだを巻くこともなく、店にとっては良いお客さんだったという。

「ただ、ちょいとばかり財布のひもが固くてね。いつも一番安い酒で、一時間は潰していたっけ……特に最後の方は、だいぶ懐具合が寂しくなっていたみたいで」

ある晩のこと、珍しくヨっちゃんから声を掛けられた。

他に客もおらず、洋治さんも軽く引っ掛けながら彼の話を聞いたのだという。

「……事情があって、今度さ、寝たきりの従兄を引き取ることになったんだ。まぁ、他に親族もいないし、仕方ないから……たださ、その従兄、ちょっと変わった奴で『タダで世話になる訳にはいかない』って言い張るんだよ。金なんて全然ないくせに」

従兄は真面目な表情で、ヨっちゃんに一枚のメモを手渡したのだという。

そこには、幾つものバラバラな数字が一列に並んでいたらしい。

聞くと、『この番号の宝くじを買ってきて欲しい』と言う。

「従兄に言わせるとさ、それが次の宝くじの当選番号なんだって。でもさ、宝くじの番号を当てるなんて馬鹿々々しくってさ。笑い飛ばして、放っておいたんだ」

だが後日、新聞を捲っていたヨっちゃんは、心底驚愕することになった。

冗談で確かめた宝くじの当選番号が、メモの数字とまったく同じだったのである。

〈しまった!買っておけばよかった〉と、深く後悔したのも束の間──

「よく考えたらさ、同じ番号の宝くじって、どこに行けば買えるのかわからないんだよ。だから、結局無駄なんだわ。大当たりの番号が、先にわかったところでさ」

それを聞いた洋治さんは、素直にこう助言した。

「……じゃあさ、ロトとかを買ったらどうだい」

それを聞いた途端、ヨっちゃんの瞳孔が〈きゅっ〉と小さくなった。

「それっきりヨっちゃん、うちに来なくなったんだよ。まぁ、儲かったのかどうかは知らんよ。でも、アイツも金じゃ苦労していたみたいだし、そうであって欲しいよね」

〈常連をなくしたのは痛いけどな〉と、洋治さんはからからと笑った。

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