黄色い(栃木県) | コワイハナシ47

黄色い(栃木県)

高山さんは一時期、会社の出向で栃木の那須に住んでいたことがある。

元々、サイクリングが趣味の彼は、ロードバイクで会社に通っていたそうだ。

ある晩、高山さんは残業で会社を出るのが遅くなった。

借家は市街から離れており、ロードバイクでも三、四十分は掛かるのだという。

人家も疎な郊外は、昼間に見晴らしがよいだけに、夜間は闇が深くなる。

彼は自転車用のライトを頼りに、ひたすらに道路を駆け続けた。

すると、ライトに浮かぶ前方の路面に、何か黄色いものが映った。

目を凝らすと、それは黄色いペンキで描かれた、人の足跡だったという。

足跡は高山さんの進行方向に、規則正しくずっと続いていた。

蛍光剤でも混ぜてあるのか、ライトに照らされたそれは妙に毒々しく見えた。

〈標識じゃないよな?……悪戯にしては、随分と手が込んでいるようだけど〉

高崎さんは不思議に思いながらも、その足跡を追うように自転車を走らせた。

数キロほど駆けただろうか、ふと見ると、一台の車が道路を遮るようにして斜めに停まっていた。

近くまで行くと、車の持ち主とおぼしき男性が、携帯電話を使っている。

交通事故でも起こしたのか思い、車体に目をやって──ギョッとした。

路肩に乗り上げた車体の下から、人間の足が二本、突き出ていた。

上半身は完全に車の下に入り込んでいて、ピクリとも動かない。

〈この人、轢かれているのか?……でも〉

黄色い足跡が、車の下敷きになった人物の足元で終わっていたのだという。

「まさか、道路に悪戯をしていた奴が、その後、車に轢かれたとは考え難かったのですけど……でも、車の運転手に質問する訳にもいきませんし、暫くして救急車が来たので僕は現場を離れたんです」

だが翌朝、事故のあった道路を通って、再び驚愕した。

昨晩、あれ程の長い距離に描かれていた足跡が、ひとつも見つからなかった。

試しに高台から遠望してみたが、やはり何の変哲もない道路が延々と続いているだけだったという。

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