お久しぶりね(東京都杉並区) | コワイハナシ47

お久しぶりね(東京都杉並区)

小学校高学年の頃、荻窪に洋館らしい三階建ての立派な建物があったんです。

でも、誰も住んでいない。

その時、肝試しみたいな感覚で、仲間三人と中に入ると、中央にはまるで映画『風と共に去りぬ』に出てきそうな大きな螺ら旋せん階段がある。

二階に上がると、ドアがいくつもあり、そのうちの一つを開けると広々とした部屋の真ん中には、一台のグランドピアノがドンと置いてある。

さらに上の階へ行ってみることにしました。

同じくいくつかのドアがある。開けて見ると、キングサイズのベッドがある。縦に長い窓は開いていて、カーテンが風でなびいている。

どうもカーテンが気になってしかたない。

ぶわあっと、風が強く吹いたと同時に、窓の枠が見えた。

そして、目に入ってきたのは、女性が首を吊って自殺している姿だったんです。

初めはカーテンの影だと思っていたんですが、姿形がはっきりしてきて、女性が下を向いて、浮いているみたいだったんです。

が、その女性がゆっくり顔を上げて、目と目が合ったのです。

髪の毛は長く、ほぼ顔を覆っている状態。

ポタポタ……

血や体液が滴り落ちるような音まで聞いてしまいました。

(とにかくここから出よう)

仲間たちにそのことは告げず、とにかくここはまずいと、洋館から出ました。後ろから先の女性にじーっと見られているみたいで、後ろを振り返らずに早歩きで。

それから約五年後。

自分たちが高校生の頃は、一人で喫茶店に入るのもぎこちない世代でした。

ある日、クラスメートの一人が、昼間は喫茶店、夜はバーに変わるお店に行こうと、三人で夜行ってみることになりました。

店は結構広く、入って両側にゆったりと座れるソファーがある。

カウンターにはママがいる。

そこで軽く食事して、何をするわけでもなく一時間ぐらいおしゃべりしながら過ごしていました。

この店に入って少し気になったのは、お店のママが僕をじーっと見ていること。

そろそろ店を出ようかと、席を立ちました。

出口までママが来て、見送ってくれたんです。

そのママは外にまで出てきて、僕にひとこと、

「お久しぶりね」

と声を掛けて、そのまま店に戻ってしまった。

〝お久しぶりね???〟

今日、初めて来たのに、おかしいなあ。

ママは二十代後半ぐらい。高校生の自分に、まるで大人に話しかけるみたいな口調で声をかけるから、変だと思っていました。

その日の夜、寝る前、突然あることを思い出したんです。

そのお店のママが、以前遊んだことのある洋館で、自殺している女性とそっくりだということを。

カーテン越しで首を吊り、その女性と目が合った……。

ママと初対面ではなかったことにその時、気付いたのです。同一人物だった。

だから、

「お久しぶりね」

だったのです。

その店は洋館の跡地に建てられたものだったんですね。そう考えれば辻褄が合います。

しかしそんな話をしたところで、信じる奴などいませんでした。

それから三ヵ月も経たない頃。

杉並区の井草八幡宮近くで、残虐な事件が起こりました。

なんと、その店のママとマスターが、のどを中心にメッタ刺しにされて殺されてしまったんです。

一度しか行ったことのない店とはいえ、ママの印象が強かったし、仲間はよくその店に行っていたので、とても他人事とは思えませんでした。その事件は今でも荻窪警察に問い合わせれば、すぐに知ることができます。

ひどくショックな内容でした。

事件直後の現場は、床がビヤ―――ッと一面、血の海。血の塊があちこちに飛び散っていたそうです。

一度現場近くに行ってみましたが、ロープで店全体が囲われていて、入ることはもちろん、見ることもできませんでした。

事件から二年ほどして、近くを通りかかったところ、その店の土地はさら地になっていました。

ある日突然工事が始まり、ビルが建ちました。

そして、今でも不思議なのが、そのビルに隣接する三角地帯。そこに、結構、高さのあるお地蔵さんがいます。

あまりにも残虐な事件が起きたから、お地蔵さんを祀まつった、というのがそもそもの理由かもしれませんが、何故にそこまで大きなものを建てなければいけなかったのかは未だに謎です。

そしてそれは、今でも存在しています。

善福寺近くのバスの停留所のすぐ近く。ここを通るたびに、自殺も殺されることも、死に方としては決していいものではないと、いやな空気を感じてしまいます。

何げに通っている人もいるかも知れませんが、実はそこにはまだ女性の幽霊がさまよっているかもしれません。

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