穴がある(千葉県) | コワイハナシ47

穴がある(千葉県)

千葉県のある山を開発する工事を請け負っていた建築業の親方さんから、こんな話を聞いた。

森に入った。木を切ろうとチェーンソーを作動させる。すると、べろーんと?を下から上へ撫で上げられた。誰かの手のひらが触れた。

思わず?に手をやってあたりを見回すが、仲間がいるだけで、悪戯いたずらをするような者の姿はない。

すると向こうでも「何だっ、気持ち悪いっ」と怪け訝げんな顔をしてキョロキョロあたりを見回している者が出てくる。聞くと、やはりべろんと何者かに?を撫でられたという。そんなことがあちこちにあって、なかなか作業がはかどらない。

パワーショベルを乗り入れて、木を根っこから掘り起こす作業に入った。森に入って根を掘り起こしていると、突然パワーショベルが停止した。見ると運転手がキャタピラを覗のぞき込もうとしている。と、その途端に、ゴロゴロッと運転台から転げ落ちた。

「おい、大丈夫か」

「どうした」

と、仲間が駆け寄ると、運転手はキョトンとした顔で、それでもキャタピラの下を覗き込もうとしている。

「穴があったはずだ」と言う。

作業をしていると、急にガタンと車体が傾いた。

(穴にでも落ちたか?)とキャタピラの下を見ようとした瞬間、何者かが肩にドンと乗った。その重みで車体から転げ落ちたのだという。

「穴なんかないぞ」

見るとパワーショベルはまったく傾いていない。穴もない。

「きっと気のせいだよ」とみんなに言われるが、運転手はどうも納得のいかない顔をしている。

「じゃあ俺が代わろう」

別の男がパワーショベルに乗り込んだ。

ガアーッと木が根元から掘り起こされる。するとみんなの見ている前で、またピタリと停止した。と思うと、ゴロゴロッとこの男も運転台から転げ落ちた。

「穴に落ちた」とやはり同じことを言う。

「穴なんかないってば」

「いや、確かにガクッと傾いた。何かが肩に乗った……」

この日、そんなことが何度もあった。

翌日も現場に入った。

すると、「ここ、こんなに明るい場所だったっけ?」とみんなが首をひねるくらいに森の雰囲気が変わっている。そしてこの日は、何事もなく工事は進んだ。

夕方、親方さんたちが帰る道すがら、ふっと地元の人たちのこんな言葉が耳に入ったという。

「何か知らんが、昨夜ゆうべあそこの森から狸の大群が逃げていったってな」

「ああ、それ俺も見た。森もああなったら狸も棲んどられんわな」

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