向こう岸(静岡県伊豆市) | コワイハナシ47

向こう岸(静岡県伊豆市)

レコード会社勤務のYさんが大学生の時、当時付き合っていた彼女と伊豆へ旅行に行った。夜の九時頃、花火をしようかと民宿から砂浜に出た。

ふたりで花火をしていても、周りに人気がない。

夜の浜辺で、ふたりだけというのがだんだん怖くなってきた。

ふと気づくと、左側に川があって、その向こう岸に大きなリゾートホテルの灯あかりが見える。その手前で何組かのカップルやグループがわあわあと遊んでいる。

「向こう、にぎやかそうだね。あっちに行こうか」と、彼女とふたり、向こう岸へ行くことにした。

川を渡るには少しさかのぼらないと橋がない。

橋を渡って、雑木林の中を海岸に向かった。

いったんホテルの灯りが見えなくなった。ところが行けども行けどもホテルの灯りも、人の気配もない。とうとう浜辺の岩場まで来た。

さっきYさんたちが花火をしていた浜が、川の向こうに見える。

「そういえば、昼間来た時、こんなとこにホテルなんてなかったじゃないの」と彼女が言った途端、なんだか怖くなって、走って逃げたという。

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