目次
海の神様の使い
昔から、「ツルは千年、カメは万年」とよく言いますが、実際、とても長生きするらしいです。だからでしょうか、カメは縁起のいい生き物として、世界中の人々に愛されている。古事記などにも、中国では仙人の乗り物として、よく登場します。
日本でも、海ガメの甲羅を利用した鼈べっ甲こう細工や髪飾りなどが、縁起のいい物として、古くから殿さまや大商人などに重宝されてきました。
旅館などに行くと、いまでも、大きな海ガメの剥製を見かけますよね。あれも、縁起をかついだ物の一種なんでしょうねぇ。
しかし、最近はそうもいかない。
海ガメの個体数が減っているんです。
ワシントン条約でも、とうとう鼈甲の輸出入が禁止されてしまいました。
カメと言えば、こんな話がありました。
何年か前に新聞の片隅に載っていたんですがね。
日本人の船長と、フィリピン人の船員が三人、小さなゴムボートで南太平洋を漂流していたんだそうです。
乗っていた漁船が、一週間前に沈没してしまったんです。
食べ物も底をつき、頼みの綱の雨も、ここ二、三日間、まったく降っていない。太陽はガンガンと照りつけるし、船員たちの肌はジリジリと焦がされていく。喉もカラカラ、意識も朦もう朧ろうとしてきた……。
(もうダメか。このまま死ぬのか)
誰もがそう思い始めていた、その時です。
背の高いフィリピン人が、狂ったように叫びながら、遠くのほうを指差したんです。
見ると、一匹の大きな海ガメが泳いでいる。
パシャ……、パシャ……
と、水面を叩きながら、ゆっくりと、こちらに向かって泳いでくる。
ほかの船員ふたりも、一緒になって狂ったように手を叩きます。なにかを早口にしゃべりながら、抱き合ったりしている。
日本人の船長は、当然すぐに、その海ガメを捕まえるように命令したそうです。
捕まえて、喰うつもりだったんでしょう。
ここ一週間、ほとんどなにも口に入れていない。こうなれば、なんでも喰わなきゃ死んでしまう。
現に、死はもう直前までやってきている。
船長には息子がいたそうです。
(死ぬ前に、息子にもう一度会いたい)
親だったら、誰でもそう思うでしょ。そのために、カメを喰って飢えをしのぎ、その生き血を飲んで喉の渇きをいやし、命をつなぐ必要があったのです。
「捕まえろ。は、早く、捕まえろ!」
船長はよだれをたらして、夢中になって叫んだそうです。
しかし、船員たちは言葉がわからないのか、わからないふりをしているのか、キョトンとして動かない。
「どうした?なぜ動かない?」
船長はイライラして言いました。
持っていた、長さ一五センチほどの万能ナイフを抜き、ギラギラ光る刃を斜めにかまえ、怒鳴りながらジェスチャーしたそうです。
「カメを捕まえろ!捕まえなきゃ、貴様ら全員皆殺しにするぞ!」
そう脅しながらね。
三人のフィリピン人たちは、しぶしぶとゴムボートを漕いで、海ガメに横づけしたそうです。
背の高いフィリピン人が、まず、ザブンと海に飛び込んで、カメを大事そうに抱え込む。三人は協力して、海ガメをゴムボートの中へ引っ張り上げたそうです。
カメは、
「ギュ、ギュ……、プッシューッ……、ギィー、ギギッ……」
と、奇妙な鳴き声ともつかない声を発しました。
(なにをする)
そう言っているようにも見えました。
船長はしゃがみ込むと、体長八〇センチほどもある海ガメの喉元に、ナイフを突きつけます。
と、それを見た、ひとりのフィリピン人がカタコトの日本語で、
「ヤメロ!」
と叫んだそうです。
「カメは幸福を運ぶ海の神様の使い。殺してはダメだ」
「使いだと?」
船長には、彼がなにを言っているのかわからなった。
「この非常事態に、なに考えてんだ、え?」
船長は顔を真っ赤にして怒鳴りはじめました。
「このままでは、いずれ死ぬ。生きて帰りたいなら、このカメを喰え!」
そう叫び、その船員を突き飛ばしたそうです。
険悪な空気が流れました。
一秒、二秒、三秒……。
そして、つぎの瞬間、信じられない出来事が起こったんです。
あの背の高いフィリピン人が、さっと海ガメを両手に抱えて、ふたたび海へザブンと、飛び込んだんです!
「あ、ああ―――っ!」
船長は一瞬、あっけにとらわれました。
なにが起こったのかわからない。
「ば、ばばばば、ばかやろー!」
大慌てで、船員とカメをボートに引っ張り上げようとする。
が、フィリピン人とカメは、そのままゆっくりと潮に流されて、消えてしまったんだそうです。
「くそっ。なにやってんだ!」
日本人の船長は目を吊り上げながら、ナイフを振り回しました。
「あのカメを喰えば、何日か、もったんだ。本当に死んでしまうぞ。おれが死んだら、みんなおまえらのせいだぞ!」
そう言って、ギラギラと光るナイフを、今度はフィリピン人の喉元に押しつける。
すると、ひとりの船員がフィリピン語で、小さくこうつぶやいたそうです。
「おまえが死んだら……?その時は船長、まずはおまえを殺して喰ってやる。カメを喰うぐらいなら、おまえの肉を喰らったほうがましだ!」
もうひとりも頷きました。
二対一では勝ち目はない。船長は座り込んでしまったそうです。
それから数時間後、ゴムボートは偶然近くを通りかかった漁船に発見され、無事救出されました。
カメと一緒に飛び込んだ男は、それよりもずっと早くに客船に発見され、乗り合わせていた医師や看護婦から、手厚い看護をうけたそうです。さらに、暖かい食事を与えられ、たまたま乗り合わせていたアメリカ人の新聞記者からインタビューを受けました。
この話がちょっとした評判になっています。
僕が見た記事は、それだったんですね。
三人のフィリピン人は、このようなことがあってから、船員をやめて陸に上がり、いまではマニラ市内で大きなレストランを経営しているそうです。
一方、その時の日本人船長は、いまどこでなにをしているのか、生きているのかさえ、誰も知らないんだそうです。
カメの解剖(広島県)
僕が小学生の高学年の頃の話です。
ちょうどその頃、近所の公園に、大きな池がありました。とにかくコケとか藻がいっぱい生えていて、汚い池でした。池の上を、ブンブンと小こ蠅ばえが飛んでいる。
でも、そういったところに、魚ってやつはけっこう棲みつくらしい。
その池にも、たくさんのフナやクチボソが棲みついていて、みなで手製の釣竿をかついで、よくそこで釣りをして遊んだんもんです。本当はいけないんですけどね……。
その池には、幻の魚「ベニタナゴ」も棲んでいました。
鱗うろこがキラキラと虹色に光って、とてもきれいなんです。淡水に棲む熱帯魚、そんな感じだった。
当然フナやコイが釣れるより、そのベニタナゴが釣れたほうが、僕たちにしてみれば嬉しいわけでしょ。
でも、そのベニタナゴってやつが、厄介なことに、やたらと口が小さいんですよ。
本当に小さいんです。小指の先ほどしかない。
なかなか釣り針を呑んでくれないわけで、ベニタナゴを釣ったら、それだけでけっこう自慢になったもんです。だから、〝幻の魚〟なんです。
それから、池にはカメもいました。
イシガメや、縁日などでよく見かけるゼニガメです。
体長は、せいぜい一〇センチか二〇センチ。甲羅が平べったくて、動きものろい。
カメが釣れると、体が重いせいか、浮きがグーッと一直線に沈んでいく。
グ――ッとです。
そのため、すぐに、
「あ、カメだ……」
とわかる。そんな時は、
「チッ、またかよ」
と悔しがる。
せっかく買った高価な釣り針を、全部、胃の中にパクリと呑み込んでしまうんですね、カメは。
そうなると、もう取れない。結局、あきらめるしかない。
小遣いの少ない子供にとっては、釣り針ってのは、けっこう高価な代物なんです。
だから、カメが釣れても、あまり嬉しくない。
その日、僕はたまたま運が悪かった。
学校帰りに、やたらと図体のでかい近所のガキ大将に捕まって、ふたりで釣りに行くことになったんです。例の池にですよ。
荷物は全部、俺が持ちました。カバンからなにまでね。
逆らえるわけもなく、小間使いのように働かされました。
逆らって、殴られるのはごめんだし、もともと僕は子供の頃から平和主義者なんです。
ガキ大将はコツコツ貯めた小遣いをはたいて、やっと買った高価な釣り針で、ベニタナゴを釣ろうと張り切っていました。
で、日が暮れるまで、ずっと釣りを続けてた。
でも、どうしたわけか、この日はいっこうに釣れる気配がないんですね。
いやーな空気が、流れはじめましたよ。
「今日は全然だな」
ガキ大将もイライラして、地面の石を蹴ったりしている。
ポチャン!
水が揺れて、石が沈んでいく。
「今日はやめとくか」
「そ、そうだね」
僕もそう思いはじめていました。
と、その時です。
「きた!」
ふいに、ガキ大将が叫んだんです。
だが、つぎの瞬間、その声は落胆のため息に変わりました。
浮きが、グーッと沈んでいくんですよ。
「カメだ」
案の定、釣れたのはカメでした。
しかも、せっかく買ったガキ大将の高価な釣り針を、胃の中にパクリと呑み込んでいる。
(これは、ただじゃすまないな)
瞬間、僕はそう思いましたね。
「クソッ。ほんと、むかつくな、カメって」
ガキ大将はカメをつまみ上げると、どうにか、針を取ろうと悪戦苦闘している。左右に揺らして、地面に叩きつける。
カメは手足を引っ込めて、クルクルと回っていきます。
しばらくして、ムクッと起き上がり、池に向かって、
ズズズッ、ズズズッ……
と動き出す。
もう少しで池……、と言うところで、ふたたびガキ大将が靴で、少しだけカメを踏みつける。
カメは必死に手足を動かして、どうにか逃げようとする。首をちぎれるぐらいに伸ばしていました。池のほうに、ね。
(池まで行けば助かる)
そう思っていたんでしょう。
「なあ」
「なに?」
「カメの甲羅の中ってさ、どうなってるのか知ってるか?」
「な、なに言いだすんだよ、急に」
「知ってんのかどうか聞いてんだろ」
「さ、さあ、わかんないな……」
「だったら、見てみようぜ。この甲羅、割って見てみようぜ」
僕は一瞬、耳を疑いました。
さらに、ガキ大将がニヤリと笑うのを見て、背筋がゾクリと凍りついたんです。
(こいつはヤバイ!)
そう思いましたね。
「よし、はがすぞ」
ガキ大将は道具箱を開けて、ドライバーを取り出しました。
カメの首に、いきなり、ブス、ブスッ、と差し込んだんです。
ドライバーが根元まで、ゆっくりと肉の中に入っていきます。血が、ダラダラと落ちてきました。
そのまま、ちょうどテコの原理で、今度はグイグイと上に引っ張り上げる。今度はひっくり返して腹に……。裂けた肉のあいだから、黄土色のはらわたがこぼれ落ちる。
ポタッ、ポタッ……、ジュワ――ッ
緑がかった、半透明な体液が、一緒になってあふれ出てくる。ガキ大将の手を、ベトベトにぬらしていきます。
「うあっ、きたねえな」
水の腐ったような臭いがあたりに立ち込めてきましたが、それでもガキ大将はおかまいなしに、笑いながら、今度は一本の棒を拾いあげ、お尻から差し込みはじめる。
グチャ……、チャ……、グニュ……
内臓をかき回すと、カメは口からボゴリッ、と泡を吐き出しました。
「ブクブク」
血を吐き出しながら、苦しそうにもがきはじめます。
ビュッ、ビュッ……、ビュビュ――!
時折、ネバーッとした茶色の粘液が、尾っぽのあたりから飛び出してくる。
そのたびに、カメは甲羅を震わせて、
「ギギィ……、ギイイィ……」
と、悲鳴ともうめき声ともつかない音を出すんです。
(助けてくれ。助けてくれ。もう気がすんだろ、やめてくれえ)
そう言っているようにも思えました。
俺は見ていられなくなって、耳をふさぎ、下を向きました。
すると、
「おい、おまえも手伝えよ!」
「え?おれも?」
「あたりまえだろ。そっち側に立って押さえつけてろ!」
「や、やだよ」
「なんだと!」
ガキ大将はこぶしを握り締めました。
「殴られたいのか?」
「わ、わかったよ」
僕はいやいや、地面に膝をつき、カメの甲羅を押さえたんです。
すでに、甲羅はグラグラでした。半分取れかかっている。
カメの血が、ゆっくりと手を赤く染めていきます。生ぐさい、腐ったような臭い。その匂いときたら、もう思い出しただけで、昨日食べたものが胃からこみ上げてくるほどです。
(ごめん……、ごめんよ、本当にごめん……)
僕は心の中で、何度もカメに謝りました。
その時、
クワ―――ッ
と、カメが一瞬、飛び出すぐらいに目を見開きました、
それから、コクリと頷いたんです。
たしかに、二度、
コクッ、コクッ
とね。その瞬間、
バキーン!
と音がして、カメの甲羅ははずれてしまったんです。
甲羅の下は、腸やら心臓やらの塊でいっぱいでした。ブヨブヨと、まだ動いているものもある。
僕はたまらず吐いてしまいました。
「ゴボッ!グエッ!ゲロゲロゲーッ!グバ―――ッ……」
あとで聞いた話ですが、カメの甲羅ってのは、人間でいう背骨なんですってね。背骨が進化して、外敵から身を守るための硬い甲羅になった。
人間だって、ムリヤリ背骨をほじくり返されたら、どうなります?
死んでしまうでしょう?それと一緒ですよ。
「つまんね」
ガキ大将はカメを蹴飛ばして、つばを吐きかけた。
池の水で手を洗うと、
「帰ろうぜ」
と言って、きびすを返す。
「う、うん」
でも、カメをそのまま残して帰ることはできません。
僕はカメを拾い上げて、池に浮かせてあげたのです。
そーっと、静かに。ゆっくりと。お葬式のつもりでした。
せめてもの罪滅ぼしのつもりだったのか知れません。
ゆらゆらと揺れて、カメは池の底のほうに消えてしまったんです。
それから二〇年以上がたったある日、地元の自治会の集まりで、僕はたまたま、そのガキ大将に出会ったんです。
ふたりとも、もう三〇代なかば。いいおじさんになっていましてね。
ガキ大将は中小企業に勤めるサラリーマンになっていました。もともと、背が高いほうだったんで、紺のスーツがビシッと決まって、それは格好よかったですよ。でも、どこか様子がおかしい。変に暗いんです。
よく見ると、頬がやつれて、目の下にもくまができている。
「だいぶお疲れのようだな」
僕はガキ大将の隣に座って、空のグラスにビールをついでやりました。
「あぁ、金造か」
すると、ガキ大将が力なく頷く。
「どうしたんだ。顔色が悪いぞ。家に帰って寝たほうが……」
「うん……」
すると、ガキ大将は急に頭をかかえ、
「なあ、金造。助けてくれよ」
と、泣き出したんです。
(これは、おかしい)
とっさに、僕はそう思いましたね。
それで、すべてを話すように彼に言ってやったんです。
彼は少しずつ話しはじめました。
ことのはじまりは、一匹のカメでした。
一年ほど前、仕事から帰ってくると、一〇歳になる息子が走り寄ってきたそうです。そして、
「見て見て、お父さん。デパートの屋上でお母さんに買ってもらったんだ」
と、小さな手のひらを差し出す。
見ると、一匹のミドリガメがチョコンと乗っている。恥ずかしそうに、顔を出したり引っ込めたりしていたそうです。
「おお、カメか」
彼はネクタイを緩めながら、そう答えたそうです。
「お父さんは、カメってなに食べるか知ってる?」
「食べ物か?」
彼はうーんとうなって、腕を組んだ。
すると、息子は、
「お父さんはなにも知らないんだな。カメは死んだ魚を食べるんだよ」
と言いました。
一見おとなしそうに見えるカメですが、たしかにメダカやフナなど、死んだ小魚の腐肉を食べたりもする。
「ブウ――」
と水面に浮き上がってきて、魚のはらわたなんかにパクッと喰らいつく。そして、そのままゆっくりと沈んでいく。
彼もその時は、
「デパートの売店の人に教えてもらったんだろ」
ぐらいにか考えなかったそうですよ。
しかし、その頃から、徐々に息子の様子が変わってきたんです。豹変、とでも言うんですかね、カメに異常なほどの執着を示すようになったんです。
朝から晩まで部屋に引きこもり、「カメの世話ができないから」「カメが寂しがるから」と、学校にも行かなくなる。
会話といえば、
「母さん、キンギョ買ってきて、キンギョ!キンギョ!」
そして、またすぐに、
「カメが腹をすかせているじゃないか!ねえ、キンギョのはらわたいっぱい買ってきて!」
当然、親は心配しますよね。
いろいろ病院にも連れてったそうですが、ダメだったらしいんです。
カメを捨てようとも思ったそうですが、息子は寝る時でも、いつもカメと一緒にいる。だから、それもできない。
さらに、ゾッとするような出来事が起こりました。
彼の家のリビングには、大きな熱帯魚の水槽があったそうなんです。
でも、ある日、全部いなくなっていた。
エサにされちゃったんですよ。カメのです。
息子は素手で熱帯魚を捕まえて、床に叩きつけて殺し、それをエサとしてカメに与えていたというんです。
それから数ヵ月後、息子は急に背中が痛いと泣き出したんです。
真夜中に、
「痛い、痛いよ―!」
と絶叫するんです。
それで、奥さんと一緒に息子のパジャマを脱がせてみると、どうしたわけか、背中がボコッと膨れている。紫色に変色している。
息子は、救急車に運ばれて、すぐに都内の大学病院に担ぎ込まれた。精密検査にかけられたそうです。
で、最新医療のX線検査でようやくわかったことは、徐々に背骨がS字に曲がってしまう病気だ、ということでした。
不幸にも、原因はよくわからないんだそうです。
そのあと、彼がどうしてもって頼むもんだから、彼の息子のお見舞いに行くことにしたんですよ。
その頃から、たしかに霊感みたいなものはありましたからね。
当時住んでいた場所から、それほど遠く離れていない大学病院だったんです。
その子は、鼻と口にチューブのようなものを入れられて、それは苦しそうでした。
「シュー……、シュー……。グッ、グギィ!プッ……、シュー……シュ―――ッ」
そして、僕を見たとたん、
クワ―――ッ
と、飛び出すぐらいに両目を開いて、僕にこう言ったんです。
「ねえ、おじさん。カメの甲羅の中ってどうなってるの?どうなってるの?」
「知らないよ」
と言っても、しつこく聞いてくる。
「どうなってるの?」
ってね。
その目が、少し笑ったように見えました。
(忘れたの?ボク、覚えてるよ)
その時、ハッと思い出したんですよ。
間違いありませんよ。
あれは、カメの呪いです。ガキ大将だった彼は気づいていませんがね。
カメの呪いは、彼がこの世で一番大切にしているものに降りかかったんですね。
本当に恐ろしい話ですよ。