系譜(東北地方) | コワイハナシ47

系譜(東北地方)

友人である住吉さんから以前、こんな話を聞いた。

「ウチの母親はねえ、視える人だったらしいよ」

彼は大変な合理主義者で、幽霊の類は一切信じない。

この話を聞いたときも、全く信じていないけどね、と前置きされてからである。

住吉さんは、東北の田舎町で生まれ育った。

彼が生まれてすぐ、母親は亡くなってしまう。

よって、遺影でしか母の顔を知らない。

また、彼の父親に関しては誰も情報を持っていなかった。

母の死後、彼は母方の親戚の家へ引き取られた。

「そこの家にはねえ。祖母に関する伝説というか噂があってね」

住吉さんが苦笑いを浮かべながら語ってくれたことがある。

彼の祖母は、幼少の頃より勘が異常に鋭く、人の死期や作物の出来不出来を言い当てることがあったという。

「でも、まあ。戦前の話だから……」

得体の知れない生き神様や新興宗教が流行っていた時代である。

彼の祖母はその得体の知れない力を親族に危惧されて、家の奥に半ば閉じこめられていたらしい。

「まあ、これは一族間の秘密というか……」

不名誉な人、一族に泥を塗る人と認識されていた。

その祖母が、あるとき奇病に罹ってしまう。

どうやら、身体中から血を流す病気であったと言われる。

もちろん、その箇所に傷があったわけではない。正常な皮膚から、いきなり血が滲み始めるのだ。

着ていた着物がすぐ赤く染まって、大変難儀したとのこと。

「出血熱とか、そんなんじゃないんだよね。無論、誰にも感染しなかったし、彼女もすぐには死ななかったから」

恐らく聖痕現象に近いんじゃないかな、と彼は独自の見解を述べた。

成る程。聖痕現象は奇跡として語り継がれることが多いが、心理的な原因で起こるという説も存在している。

合理的な説明のぎりぎりの線で留まっている気がする。

その奇病は死に至る病ではなかったらしく、彼女はそれで命を落とすことはなかった。

「でも、あんまり長生きもできなかったんだよね」

あるとき彼女は子供を身籠もった。

そして女の子を無事出産すると、まるでその役目を終えたかのように、産さん褥じょくの中で息絶えた。

だが、ここで問題になってくるのが、その子供の父親の件である。

驚くことに、誰もがその人物に心当たりがなかったのだ。

不名誉な娘として半ば家に監禁されていたわけであるから、彼女に異性の知り合いがいたとは到底思えない。

「まあ、一族の誰かを疑うよな」

しかし、当然と言えば当然かもしれないが、少なくとも考えられる一族の男達は皆、強く否定した。

「ウチの祖母はそんな感じだったんだけど……」

彼女が息絶える前、予言らしきものを一つ遺している。

──私の孫は、生きて四十五を迎えることはない。

この話をしてくれたとき、住吉さんは四十三歳であった。

彼が合理主義者に成らざるを得なかった理由が、分かるような気がする。

シェアする

フォローする