まれ人(和歌山県) | コワイハナシ47

まれ人(和歌山県)

もう何十年も前の話である。

和歌山県のある山に、Sさんが柴刈りに入った。

背負子を背負って、天気もいいので浮かれていつもとは違う山道を登った。しばらく行くと、どこをどう通ったのか、獣道のようなところに出た。なおもその獣道に沿ってずんずん山奥へ進むと、大きな磐いわが見えた。ここらで弁当にでもするか、とその磐に座って休息していると、ザワザワッと正面の木が揺れて、わっと枝が分かれた。

そこから、身の丈二メートル以上はある大男がひとり出てきた。

あっ、とSさんは、その男を見て息を?のんだ。

異様なのは身の丈ばかりではなかった。

その男の額に、目がひとつだけ。

毛皮のようなものを身に着けている。

Sさんと同じく背負子を背負っていて、ドーンと背から降ろし、よっこらしょと隣に座った。

びっくりして身動きできないSさんに向かって「煙草を持ってたら、くれんか」と言う。その言葉には独特の訛なまりがあった。

Sさんは持っていた煙草を一本さしだした。大男はうまそうにそれを一服吸い、

「こんなところに人が来るのは珍しいが、いったいどうした」と言う。

「木の枝を探して、ここまで来た。そういうあんたはどこから来た?」と聞くと、

「ずっと奥にわしらのようなもんが住んどる集落がある。お前らが来ようと思っても来れんようなところじゃ。お前もここまで来たのははじめてじゃろうが、わしも久々についこんなところまで来てしもた」と笑った。

Sさんはしばらくこの大男と会話を交わして、別れた。

それからも何度かその獣道へ行こうとしたが、その道にはついぞたどり着けなかったのだという。

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