ふたつの煙(鳥取県) | コワイハナシ47

ふたつの煙(鳥取県)

通信会社の代表をやっているKさんという人が、ポツンとこんな話を聞かせてくれた。

Kさんの実家は、鳥取県なのだそうだ。

ずいぶん前のある夏、故郷へ帰った。その夜は友人のお宅に泊まったという。

真夜中、胸苦しさにふっと目が覚めた。

電灯の豆球だけがついていて、ぼんやり部屋の中が見える。

と、足元の畳の縁から煙のようなものがしゅうしゅうと出ている。

(火事か!)と一瞬思ったが、そうではない。その煙は上へ昇らずに何かの形になってゆく。ふっとまた枕元で気配がして、そちらへ目をやるともうひとつ煙がある。やはり何かの形になっていく。

煙が人の形になった。

(じいさんとばあさんだ)

何とはなく、そんな直感が走った。

やがてその朦もう朧ろうとした二体の人のようなものが音もなく、ふーっとKさんに近づく。途端にKさんは身動きができなくなった。

おじいさんが、Kさんにのしかかってきた。そして肩のあたりをユサユサと揺すってくる。おばあさんに思えるものは、Kさんの脇腹あたりをさわっている。必死になってKさんを起こそうとしているように思える。

(俺は起きてるぞ!)

と心の中で叫んだ途端、ふっと体に自由が戻った。

朦朧としたふたりの老人は、またそれぞれ出てきた位置に戻ると、白い煙の人形になると、ただの煙だけになって先ほどの逆回転フィルムでも見るかのようにふーっと畳の中へ吸い込まれるように姿を消したのである。

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