十三回(愛知県名古屋市) | コワイハナシ47

十三回(愛知県名古屋市)

タレントのTさんが、名古屋の放送局の仕事のため、市内のホテルに泊まった。

ところが、部屋の前に立った時、とても嫌な雰囲気を感じたのである。

(この部屋には泊まりたくない)と思ったが、疲れていたこともあって、えいままよ、とばかり部屋に入った。正体不明の嫌悪感は、やはり部屋の空気にどよんとこもっていた。

酔っぱらって寝てしまおう、と自動販売機で大量にビールを買い込んで飲んだ。

酔ってベッドに横になった。

ところがどーんと重い金縛りにあう。

その重みに耐えていると、やがて解けた。

(もっと飲んで酔っぱらおう)

そう思ってまたビールを飲んで横になる。

またどーんと重い金縛りに襲われる。そして解ける。また飲み直す。横になる。金縛り……。Tさんははっきり回数を覚えているという。

十三回、これが続いたのである。

十三回目にはさすがに耐えられなくなった。時計を見ると深夜の二時。チェックインしたのが十二時過ぎだったので、わずか一時間半のうちに十三回も金縛りにあったことになる。また、ビールを飲んだ。と、コンコンコンとドアをノックする音がする。

(こんな時間に誰だ?)と思う。

コンコン……、やはりノックの音がする。

不審に思いながらもドアまで行って開けてみた。

誰もいない。無人のホテルの廊下があるだけだ。

(おっかしいな)と首をひねりながらドアを閉め、ベッドへ戻ろうとした時、いきなり背筋にゾクッとした悪寒が走った。

はっ、として右手を見た。ユニットバス。そのドアが少し開いていて、明かりが漏れている。この部屋に入ってからここはまだ使っていない。(じゃあ、何でドアが開いてて明かりがついてるんだ?)と、恐る恐るドアを開けた。

いた。

ツルツルの坊主頭をした素っ裸の男が、両足を抱えて後ろ向きにうずくまっている。

「誰だよあんた」

と声をかけるが、男はじっと黙ったまま、微動だにしない。

「出てってくれよ」と言うが、反応しない。

「出ろって言ってるんだよ!」とさすがにTさんは声を荒げた。すると、スッと男は立ってこちらを向いた。白く抜けるくらい真っ青な顔。はっ、と驚くTさんの横を通り抜けてバスルームから出ると、そのままの姿で部屋を出た。

バタン、とドアが閉まった瞬間「おい、そんな格好でどこ行くんだよ」とあわててTさんは後を追うようにドアを開けた。

無人の廊下。

もう、人影はなかった。

その途端に(あーっ、ここ、こんな者の出る部屋だったんだ!)と気がついた。もう寝られない。そのまま朝まで布団にもぐって震えていたという。

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