水割りとカラオケ(兵庫県洲本市) | コワイハナシ47

水割りとカラオケ(兵庫県洲本市)

淡路島の洲本市にあったカラオケ屋さんで聞いた話である。

洲本市が主催するカラオケ大会の一カ月ほど前から、四十半ばくらいの恰幅のいい男の人が毎日このお店に通っては、延々同じ歌を熱心に歌って帰っていく。聞くとそのカラオケ大会に出るんや、と大はりきりであったという。

カラオケ大会の当日。お店は七時にオープンするのだが、開けると同時にその男が入ってきて、カウンターに座ると黙ってウイスキーを一口飲んだ。するとそのままお店を出ていったのである。勘定も払わずに。アルバイトの女の子は「まあええか、いつも来てるおっちゃんやし」と思って、お店のママにそのことを報告した。するとママが「誰が来たって?」と不思議そうな顔をする。

「ほら、いっつも来てる、恰幅のええおっちゃんやん。いつもおんなじ歌を歌って帰るあのおっちゃんやん」と女の子が言う。その時もうひとりの女の子もその様子を見ていて「そういえば、おっちゃん、元気なかったね。一言もしゃべらんと。カラオケ大会、失敗したんとちがう?」

するとママは「あほ言いなはんな。あの人、死んだがな」と言う。

「えーっ、いつ!」

「昨日やがな。かわいそうに心臓発作の急死やってんて」

「そやけど……おっちゃん、来たな……」

「うん……、これ」

女の子は、男が一口だけ飲んだウイスキーのグラスを指さした。

翌日から、お客さんの苦情が出るようになった。

ある歌だけが、画面に出ない、というのだ。

調べてみると、確かに出ない一曲がある。レーザーディスクには異常はない。何度かけてもその歌だけがモニターされないのだ。

その歌は、死んだ男がいつも歌っていた演歌だった。

レーザーディスクは修理屋に見てもらったが原因不明。しかたないので歌のリストにマジックで線を引き、その曲はお店から永遠に抹消されたのである。

シェアする

フォローする