廃校(北海道) | コワイハナシ47

廃校(北海道)

ライターのKさんが、五、六年前、カメラマンのMさんとふたりで北海道に取材に行った。

取材先は、函館山の麓にある小学校だったそうだ。ただしその小学校は廃校になっていて、本来ならば取り壊すべきところを、大変古い建物だったので保存されているものなのだそうだ。

取材許可を取って、教育委員会の人がひとり同行してくれ、鍵を開けてくれた。

校舎はロの字の回廊型に並んでいて、真ん中が中庭になっていた。とはいってもそんなに大きな学校ではなく、中庭はテニスコートくらいの広さで、そこには背丈より高い草がぼうぼうに生えている。

「廃校になって五年くらいたつんです」と教育委員会の人が説明してくれる。

中に入ると空気は淀んでいて、廊下は埃だらけ。Mカメラマンはさっそくカメラポジションを捜して廊下を歩き出し、Kさんも校内を見て回った。

取材が終わった。この時Mカメラマンが不思議なことを言った。

「さっきはありがとう」

「えっ、何のこと?」と言うと、「電気、つけてくれたじゃない」と言う。

南側の校舎には窓から日が射し込んで明るかったが、北に面した校舎は真っ暗だった。ところがMさんが廊下を歩くと、廊下の電気がついて明るくなった。(ああ、Kさんがつけてくれたんだ)と思って写真を撮る。また次の場所へ移動し、廊下を曲がると先はどの電気がふっと消えて、行く先の廊下や教室の電気がつく。そんなことが最後まで続いたというのだ。丹念に仕事の様子を見てくれていて、手伝ってくれたのだと思った。それで、素直にありがとうと言ったのだという。

ところがKさんはそんなことはしていないし、教育委員会の人も「警備用の電気は玄関に来てますけど、校舎の電源は全部落ちてますから、電灯はつきませんよ」と言う。

そういえば、Kさんも不思議に思ったことがあったのだ。

埃まみれの教室や廊下。ところが一階にある校長室だけは、埃、塵ひとつなく、床にはワックスがかかっていて太陽の照り返しがあった。机の上も艶つやが出るほど磨かれていた。今の今まで、几帳面な校長先生がそこにいた、という雰囲気だったのである。

シェアする

フォローする