ここだったか(長野県) | コワイハナシ47

ここだったか(長野県)

大阪のK高校の林間教室は長野県の野尻湖で行うことが恒例だったのだそうだ。ところがある事故があって以来、野尻湖での合宿は取り止めとなった。そしてAさんたちが二年の時、八年ぶりに野尻湖での合宿が再開されたのである。

なぜ、八年間取り止めになっていたのかはわからない。事故とは何だったのかも聞かされていない。先生方はただ「まあ、いろいろあってな」としか言わない。

野尻湖に着いた。それぞれのバンガローが割り当てられた。

その夜のこと。

二段ベッドの上下で寝ているどうしが口論をはじめた。

「おい、いちいち俺の肩を叩たたくな」と上にいる者が下の者に怒鳴っている。

「俺、何もしてないやん」

「嘘つけ、俺がウォークマン聴いてたら、お前、俺の肩をポンポン叩いたやないか。ちょっとしつこいぞ」

「いや、俺、寝てたぞ」

「嘘つけ!」

ちょっと上の者の怒り方が尋常でない。まあまあと周りの者がいさめた。

しばらくしてまた「おい、やめ言うてるやろ!」と言う声。

「お前、俺のウォークマンのボリュームをさわったやろ」

「俺、知らんて」

「お前しかおらんやろ!急にボリューム上げやがって。鼓膜破れるわ」

「俺、寝てたって」

言い争いがはじまった。「おいおい、俺見てたけど、そいつお前に悪さなんてしてないぞ」と同室の仲間がまた割って入る。

「そやけど誰かの手が下からにゅっと出てきて、ウォークマンのボリュームを……」

とその時、部屋の電灯がふあっと薄暗くなって明るくなる。と、またふあっと暗くなって明るくなる。「なんや、電灯が変やぞ」と誰かが言いかけると、カタカタカタカタカタッと窓ガラスのうち上の方の一枚だけが小刻みに震えている。

「風か?」

「風やったら他の窓ガラスも鳴るやろ」

ガタガタガタガタガタガタッ、ガタガタガタガタガタッ……やがてこれがガンガンガンガンガンという壮絶な音に変化した。

「誰かがガラス、叩いてるぞ」

「あんなところに人がおるわけないやん……」

やがてバアーン、バアーン、バアーン……。窓ガラスが割れんばかりになる。

そして、人の声が聞こえる。

何を言っているのかはわからないが、若い男の声のような気がする。

「声……、聞こえるか?」

「うん……」

「誰の声や」

その瞬間、電灯が消えて真っ暗になった。

部屋の全員が悲鳴をあげて、わっと外へ出た。

悲鳴を聞いて、周りのバンガローから生徒たちや先生が駆けつけた。

「どうした」と先生。

「実は……」と事の次第を説明しているところへ、教頭がとんできた。

「どないした」

また、説明する。と教頭の表情がみるみる変わった。そして「あっ、そうか、ここやったんか!」と言う。

「ここって、何がですか?」

「八年前のことやから、どっかは忘れとったけど、ここやったんや。ああそうか」

「ですから何が?」

すると教頭は我に返ったようにハッとして「何でもない、何でもない」と生徒たちをいさめた。ともかく君らはバンガローを替えた方がええやろ、とAさんたちはなぜかバンガローを替えてもらった。

後日、先生からこんな話を聞かされたという。

八年前の林間教室の時、野尻湖で溺死した生徒がいたという。その遺体を運び込んで、両親が来るまで安置していたのがその部屋だったのだそうだ。

「同じ学校の生徒が来たいうんで、喜んどったんや」と先生が言った時、またゾッとしたそうだ。

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