真っ白い女(北海道) | コワイハナシ47

真っ白い女(北海道)

北海道 I・K 男 23歳 会社員

高校時代、私は演劇部に入っていました。

入っていたと言っても正式に入部していたわけではなくて、「人手が足りないので裏方を手伝ってくれないか?」と、友人に頼まれて照明係を手伝っていただけなので、それほど演劇の世界にのめり込んでいたわけではありません。しかし、その他の部員、特に役者達は、高校生とはいえかなり真剣にやっていたので、市の演劇コンクールとかでも注目されている感じでした。

毎年ある市の演劇コンクールが近くなると、夜遅くまで体育館のステージで舞台の稽古をする事が恒例となっていたのですが、その年はバスケットボール部も大会で良い成績を収めてしまったがために、我々演劇部が体育館を使用出来るのが、バスケットボール部の練習が終わった後でないとダメという事になってしまいました。

体育館の使用は、常に運動部が優先なのが我が校のルールでした。

その事を受けて、舞台上で本番通りの進行で行う「通し稽古」を目一杯したい部長が顧問の先生と掛け合い、学校に泊まり込んで深夜まで体育館で稽古出来るように融通してもらったのです。私はスポットライトを当てる照明部だったので、当然「通し稽古」には参加しなくてはなりません。そして、その日、これから話す霊体験をしてしまったのです。

学校での私達の宿泊先は、食堂の上にある宿舎でした。ここには顧問の先生が寝泊りする舎監室、二段ベットが四つずつ設置されている寝室が四部屋、風呂、トイレ、洗濯機のある洗い場がありました。

この宿舎に来て何より驚いたのは、二段ベットや部屋の壁やなんかに、アイドルのシールやら修学旅行先で買った御札やらがベタベタと大量に、いたる所に貼り付けられていた事でした。

そのレイアウトはちょっと不気味でしたが、まあたいして気にも止めずに、早々にそれぞれが自分の寝るベットを選んでいました。

私も自分のベットを決めると、早速そこに寝っころがってみました。ベットの上でボーっとしながら当たりを見回していると、少し気になる事が出てきました。それは、あちらこちらに貼られているシールのアイドルが、ちょっと昔のアイドルなのです。ちょっとというか、10年ぐらい前の自分の兄や姉の世代のアイドルのシールばっかりなのです。

「なんか、全部古いな」

私がアイドルのシールに対してそう言うと、演劇部の部長のWが「この宿舎が使われんの、8年ぶりなんだってよ」と言いました。

「8年!? 古いっすね! それまでどこも使ってなかったんですか?」

後輩のTが聞いてきました。

「らしいよ。特に学校に泊まり込んでまでやるような部が無かったから、ずっと『開かずの間』だったらしい」

「『開かずの間』っすか!? 大丈夫なんすか!? 布団とかカビてないすか!?」

「『開かずの間』って言っても、毎日食堂のおばちゃんと用務員さんが見回りしてるから大丈夫っつー話だよ」

部長の説明を受けて、まさか自分達の学校に『開かずの間』といわれている場所が有ったとは! と、私達は勝手に盛り上がっていました。

ちなみに、この時の演劇部員は私、部長のW、後輩のT、役者のAとMとS、もう一人の照明のK、女子部員のN、Y、Dのちょうど計10人です。あと顧問のD先生も一緒に泊まるので、この宿舎には11人いたという事になります。

自分達の荷物を部屋に置くと、私達は早速体育館に移動して稽古を始めました。稽古では、照明を当てるタイミングから効果音を挿入するタイミングまで細かく何回も何回も繰り返し行いました。そうこうしている間に、あっという間に深夜の三時くらいになってしまいました。さすがに「もう寝よう」という事になり宿舎に戻ると、汗だくの男子部員の方からシャワーを浴びる事になり、私達は風呂場へ移動したのです。

脱衣所と浴室は、すりガラス越しを隔ててつながっています。脱衣所からはうっすらと浴室が見え、浴室からは脱衣所が見えます。銭湯と同じ構造を考えてもらえば間違いありません。

私達はさっさと服を脱ぐと浴室に直行しました。全員が浴室の洗面台に腰掛けてシャワーをひねり、頭からお湯をかぶり出します。私は一番端っこに座り、右隣に私以外の部員が横並びに座っています。私の左隣はすりガラスで、そこから脱衣所が見えます。

私達がさっきまでの稽古を振り返りながら頭を洗っていると、私の真横に座っていた後輩のTが突然こちらを見て言いました。

「Iさん、その人誰っすか?」

「はっ?」

私は意味が分からず、まずはTの顔を見ました。Tの顔は、私同様まだシャンプーが完全に洗い流されておらず、泡だらけでしたが、その状態のまま私の方を見て指を指しています。

「え? 何が?」

私がそう言うが早いか、部長のWが「うわあああああああ!」と突然こちらを見て叫びだし、残りの部員も「うあああああ! 誰かいる!」と叫んで、洗い終わってない泡だらけの状態のまま湯船に飛び込んで行きました。

私は何がなんだか分からないまま、Tに指さされた方向、つまりすりガラス越しの脱衣所の方を向くと、そのすりガラス越しの向こう側に真っ白な女が立っていました。室内なのに、明らかに髪の毛がゆらゆらと揺れていました。

「ぬああああああ!!」

私も驚きのあまり絶叫すると、みんなのいる湯船に突っ込んで行きました。怖くて後ろが振り返れません。

その真っ白い女が脱衣所にいるせいで逃げるに逃げれず、どうしようかパニックになっていると、誰かが「あっ!いなくなった!」と叫びました。

私達は即効で脱衣所に行くと、パンツだけ履いて悲鳴を上げながら宿舎の廊下に飛び出しました。奥の部屋から女子部員三人とD先生が出てきます。

「どうしたんですか?」

一人の女子部員が聞いてきます。

「幽霊が出た!」

私達は口々にそう言いました。

「幽霊?」

D先生が訝しげに言います。

「真っ白い女がいました!」

後輩のTが言うと、女子の一人が「あーっ!」と叫んで私達の後ろを指さしました。咄嗟に振り返ります。そこには、風呂場の方から走ってきて、一階へ続いている階段を一気に駆け下りていく白い女の姿がありました。もの凄い勢いで走っているはずなのに足音は何一つ聞こえませんでした。

私達が「あれだ! あれ! わあああ!」と言って再びパニックになるのと反対に、真っ白い女を真正面から見てしまったD先生や女子三人は青ざめた顔で固まってしまい、全く動けなくなっていました。

しばらくすると、D先生が「あれ、なんだったんだ?」と独り言みたいに言って一階に降りていこうとしました。さすがに先生を一人で行かすわけにはいかないので、全員でついて行きました。

一階は何の変哲も無いいつもの見慣れた食堂の風景でした。電気は点いていません。

私達は食堂の電気を点けて辺りを見回して見ましたが、真っ白い女はどこにもいませんでした。

その後、私達は眠れぬ夜を過ごして朝を迎えると、私達の朝食の準備をするために食堂のおばちゃんや用務員さんがやって来ました。

私はおばちゃん達に昨夜の出来事を話しました。しかし、返ってくる言葉は、「幽霊?この学校に幽霊なんかいるの? へー」という感じの軽い言葉ばっかりで、あの真っ白い女に関しての手がかりは何一つ掴めませんでした。

私達は色々な人に自分達が見たモノの話をして歩きましたが、私達11人が確実に見たあの真っ白い女に関しての噂や目撃談は、この学校には何一つありませんでした。

あれは一体何者で、何が目的で現れたのか、今もって分かっていません。

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