学校で出会ったもう一人の自分(静岡県) | コワイハナシ47

学校で出会ったもう一人の自分(静岡県)

静岡県 G・K 男 29歳 教師

これを心霊体験と呼ぶべきかどうかは迷う所ですが、私が学校で体験した不思議な話です。

私は小学校の教師をやっています。教師としてはまだまだ未熟ですが、今年で五年目の教師生活に入ります。今回お話する私の体験談は、まだ教員免許取り立ての頃に体験した話です。

私が初めて赴任した小学校は、秀才の集まる進学校のようなところではなく、極めて平凡でのどかな牧歌的な小学校でした。牧歌的というと変ですが、生徒と教師の関係が近いと言うか、都内の学校と違いあまり窮屈な感じがしない校風で、生徒も教師も伸び伸びと過ごしていたのが印象的でした。

そんな伸び伸びとした牧歌的な学校にも怪談話はあるようで、生徒たちは夏が近づいてくるとその手の話をして休み時間とかに盛り上がっていました。その小学校に伝わる怪談話がどんな話かと言うと、「トイレの花子さん」や「音楽室のベートーベンの肖像画の目が動く」とか、全国の学校に伝わる怪談話と何から何まで同じで苦笑したのを憶えています。

それでも子供たちにとっては新鮮な話なようで、そういった怪談話に夢中になっているのを何度も目撃しました。

ある日、そんな怪談話に精を出している生徒たちが「先生、幽霊見た事ある?」と私に話をふって来ました。私はそんなものは見た事が無いので、「無いよ」と答えました。

「幽霊っていると思いますか?」

続けて質問してきます。

「先生は見た事無いけど、いるとは思ってるよ」

私は幽霊は見た事はありませんが怖い話やオカルト話は好きな方なので、生徒たちに合わせてやることにしました。

「4時44分に音楽室に行って校歌を歌うと、一階のらせん階段で幽霊とすれ違うんだって!」

と、生徒の一人は言いました。

お! 新しい怪談だな、と私は思いました。今までは、全国にある「学校の怪談」をそのまま話してるだけだったのに、ここに来て初めてこの学校に伝わる「学校の怪談」を聞いたので興味深く思いました。

しかし、4時44分とか、らせん階段とかのキーワードがチープで、いかにも作り話な感じが残念でした。ちなみに「一階のらせん階段」というのは、その小学校の音楽室は二階にあって、その音楽室の出入り口正面から一階へ直通している階段がありました。それがらせん階段だったので、生徒・教師問わず、学校の誰もがその階段の事を「一階のらせん階段」と呼んでいました。

「先生、やってみてよ!」

生徒の一人がけしかけます。私は笑いながら「怖いから嫌だ」「先生は音痴だからダメだ」とか言ってはぐらかしました。正直な話、「面倒くさかった」というのが本音です。その話も全く信じていませんでした。

下校時間が来て生徒の大半は帰宅し、残るは部活に励む高学年の生徒だけとなりました。その生徒の多くは校庭や体育館にいます。教室に残っている生徒はいないはずです。それを確かめるため、私は全教室の見回りに行きました。

その小学校は三階建てでした。私は一階の教室から、居残って不審な事をしている生徒がいないか順次見ていきます。見て回る教室はがらんとしていて、不審者なんてもちろん見当たりません。平和そのものでした。

私は三階の全教室まで見終わると、次は音楽室や視聴覚室などの部屋の確認に行きました。

当然、誰もいません。どの部屋も異常が無い事を確認すると、私は面白半分で再び音楽室に向かいました。先ほど生徒から聞いた話を、何故か実行してみようと思ったのです。しかし、もうすでに夕方の6時を過ぎていたので「4時44分」というのは守ることは出来ません。もともと信じていなかったので、あまり細かいことにはこだわっていませんでした。

私は音楽室に行くと、誰もいない部屋の中で校歌を歌いました。別に、オペラ歌手のように直立不動で真剣に歌ったのではなくて、音楽室の中をウロウロしながら鼻歌みたいな感じで歌いました。しっかりフルコーラス歌うと音楽室から出て、入口の目の前にあるらせん階段を降りていきました。何事もないまま一階にたどり着きました。私は、「やっぱ4時44分じゃないからダメだったのかなー?」と、心にもないことを言って一人でふざけていました。

こうして全ての教室の見回りが終わったので、職員室で自分の荷物をまとめて、退勤時間まで座っていました。やがてチャイムが鳴ると、私は帰宅の途につくために職員室を出ました。下駄箱に続く廊下を歩いている最中、何の気無しに教室の中を覗きながら進んでいくと、ある教室に男子生徒が一人で椅子に座って机の中をガサゴソとやっているのが見えました。私は一目見て悪戯をしている生徒だと思ったので、「コラ! なにやってるんだ!」と怒鳴り込みました。

私の怒鳴り声に驚いてその生徒が振り返りました。

誰だ?

見覚えのない生徒だったのですが、なんとなくどこかで見た記憶があります。不思議な感覚にとらわれ、私はしばしその男子生徒を凝視していました。男子生徒は突然走りだして廊下に飛び出しました。

「待て!」

私も追いかけて廊下に飛び出したのですが、男子生徒の姿はもう後ろ姿しか見えません。追いかけたのですが、距離が一向に縮まらず、私にはその男子生徒の背中しか見えませんでした。そして、廊下の突き当たりから曲がり角へ入ると、その男子生徒は忽然と姿を消していました。

私は気味が悪くなりました。そのまま自宅へと帰ったのですが、あの男子生徒の顔が頭から離れませんでした。

どこかで見たことあるけど、誰だっけ?

自分の学校の生徒ではないという事だけは確信を持っていました。

帰宅後、私は風呂に入り、洗面台の前で顔を洗っている時にそこで不意に気づいたのです。

あの男子生徒は、子供の頃の私でした。

私は、私自身と遭遇してしまったのです。

その事に気づいたものの、何故あんな事が起きたのか? 何が起こるのか? 分からないまま、現在に至っています。

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