幽霊トンネル(茨城県) | コワイハナシ47

幽霊トンネル(茨城県)

茨城県 S・J 男 22歳 大学生

私は大学で物理学を学んでいます。物理学を学んでいる事から、「幽霊」という存在を否定する立場の人間に思われる事も多いのですが、実際は「科学で説明出来ない現象があってもおかしくない」と考えています。こういった考えの持ち主は結構多くて、私の身の回りにも心霊現象を信じている同級生や研究者はいます。ただ、やはり物理学を専攻している人間の性として、幽霊を科学的に解明したくなるのです。欧米ではそういった研究が割と大きめな研究予算を投じて大規模に行われていたりもするのですが、日本ではこのテの研究はまだまだ盛んではありません。ですので、私は夏休みを利用して、大学の仲間を募って個人的に心霊現象を調査してみる事にしました。これは完全に個人的な趣味で、協力してくれた仲間達もただの好奇心で参加してくれました。

まず、私達はどのような形の調査を行うべきかを検討しました。そこで出た案は、シンプルに「心霊スポットに行ってみる」というアイデアでした。まあ、それが一番手っ取り早いのでそれでいく事が満場一致で決まりました。

次に、どこの「心霊スポット行くか?」という協議でたくさんの候補地が挙がったのですが、これも地元では有名な「幽霊トンネル」という場所にするという事があっさりと決まりました。

そして、その「幽霊トンネル」を訪れる時間ですが、ある欧米の心霊研究家が「幽霊というのが昼間より夜中に目撃が多いのは、日中に降り注いでいる太陽光線が幽霊の存在を隠しているのではないか? 太陽が隠れて太陽光線の照射の影響が弱くなると幽霊の姿は見えやすくなるのではないか? だから目撃談は夜が多いのではないか?」という幽霊と太陽光線の関係を言及しているので、今回はそれを信じて夜に行く事に決めました。

しかも、さらに徹底して、怪談話につきものの「草木も眠る丑三つ時」である午前二時~三時頃に行く事で決定しました。

そして持っていく物は、動画撮影用のビデオカメラ・録音機(デジタルとカセットテープの2種類)・カメラ(これもデジカメとフィルムカメラの二種類)です。

あくまで個人的な心霊調査なので、この程度しか用意出来ませんでした。しかし、私個人としては、心霊現象を記録するという事より自分自身が幽霊の存在を実感する事の方が大切だったので、あまり記録出来るかどうかという事にはこだわっていませんでした。ただ「見れたらいいな」と思ってました。

参加メンバーは私を入れてたったの四人です。後輩のO(男)、同期のE(男)、同じく同期のH(女)と私というメンツです。私以外の三人は、調査だ研究だと言った堅苦しさはそれほど感じられず、夏休みの暇つぶしっぽい感じでした。私はそれを別に気にしませんでした。

私達が行く「幽霊トンネル」という場所は山奥にある廃トンネルなどではなく、海沿いの見晴らしの良い国道沿いに有ります。今現在開通しているトンネルの真横に旧トンネルとして放置されているのですが、その出入口はとても大雑把に封鎖されていて中に入ろうと思えば簡単に入れてしまうので、あまり禁忌の場所という雰囲気が無いのがタマにキズです。

しかし、「出る」という事ではとても有名な場所で目撃談は数え切れないほどあります。そもそも、その「幽霊トンネル」こと旧トンネルが取り壊されない理由も、取り壊そうとすると不可解な事故が多発してしまって取り壊す事が出来ない、というのが原因と地元では噂され続けていました。私達はその「幽霊トンネル」に深夜二時に訪れ、トンネルの内部にまで入り込み、トンネル内でビデオ・写真・音声を記録する事を今回の調査の目的としたのです。

深夜二時。私達は車を道路脇に停めると、それぞれ録画・録音機器を手に持ち、「幽霊トンネル」の中に進入しました。懐中電灯などの照射物は一切持たずに進入します。

トンネルの中はいたって普通で、このトンネルならではの何ヽかヽなんてものは何もありませんでした。

「普通のトンネルね」

Hが言いました。

私達は同じ感想を持ちながらも、とりあえず手に持っているビデオやカメラなんかを四方八方に向けて歩きました。同期のEは手当たり次第写真を撮っています。

「なんか、本当にただの廃棄トンネルだな」

Eがそう言うとおり、トンネル内は何の変哲も無い光景が広がっています。

私達は歩いているうちに、何事も無いまま出口に着いてしまいました。いくらなんでも、このままでは帰れないと思い、もう一往復しようという事になりました。しかし、もう一回トンネル内を行き来した所でやはり何も起こりませんでした。それでも諦めきれず、三度目の正直だ! とか言ってもう一回往復しましたが、やはり何もこれといった事は起きませんでした。

「さすがに疲れましたね。もう帰りません?」

後輩のOが言いました。

「もしかしたら、肉眼では見えてなかったけど、ビデオとかには写ってるかもしれないし。家に帰ってチェックしません?」

この提案にみんな納得したものの、私はダメ元で「あと一回だけ」とみんなにお願いして、もう一往復する事になったのです。

最後の一往復は、あちこち注意深く観察しながら慎重に進んで行きました。

しかし、相変わらず何事も無いまま出口が近づいて来ます。

すると、Oが突然「待て」と言いました。「待って」ではなく「待て」でした。後輩のOの言葉使いの変化に戸惑いながら私達は彼の方を向きました。Oは天井を見上げて仁王立ちしていました。私達もつられて天井を見上げてみましたが、特に何もありません。

「O、なんだよ? どうした?」

Eが聞くと、Oは天井から私達の方に視線を直してこちらを凝視します。すごく不気味な空間でした。

「おめえら、こっから出て行け!」

いきなり、背後から男の怒鳴り声がしました。私達は慌てて振り返ると、後ろには男なんかおらずHがつっ立っていました。

「おめえら、早く出て行かねえと殺すぞ!!」

その言葉はHの口から出ていました。確かにHの口から出ている言葉なのですが、それが女の声ではなかったのです。

完全に別人の男ヽのヽ声ヽでした。

私達は驚きのあまり言葉を失い、思わず挙動不審だったOの方を向きました。彼は白目を剥いて、笑ったような表情で舌をベロベロ出していました。

「うわああああ!」

私とEは、Oの顔の気持ち悪さについ声を出してのけぞり、咄嗟に「逃げよう!」と思い正面を向いたのですが、そこにはまばたきを一切しないで目を見開いている無表情のHが立っていました。

彼女が再び、私達を真正面から見据えながら「死にてえのか! 殺すぞ!」と男の声で怒鳴りました。

すると今度は、「あーーーーーん」という甘ったれた泣き声のような声が聞こえて来ました。私達の後ろからです。

振り返ると、白目を剥いて舌をベロベロ出してるOの後ろ側、つまり私達が向かっていた方向と反対側のトンネルの出入り口の方から、髪の毛を振り乱している何者ヽヽかヽがこちら側に向かって走って来ていました。

「うわあああ! なんだよこれ! どうしよう! どうしよう!」

と、私とEはパニックになり、ついには「ぎゃあああああああ!」という大声を上げながらHの隣を通り抜けて、その何者ヽヽかヽがやって来る反対側の出入り口の方へと猛ダッシュで逃げました。

なんとか追いつかれる事無くトンネルの外に出ると、私とEは多少の冷静さを取り戻し、OとHの事を考えました。

いくら待っても二人は現れません。

そして信じられない事に、トンネルの外からはトンネルの中は何も見えませんでした。トンネルの中は真っ黒ヽヽヽにしか見えないのです。トンネルの外から二人に呼びかけても何の返事もありません。

 トンネルの外でOとHを待ちながら、私は彼らを巻き添えにした事に責任を感じ始めていました。この心霊調査を提案したのは私だからです。

しばらくすると、女性の声で「おーーーい!」という声が聞こえてきました。Hの声でした。

「H!? おーーーい! ここにいるぞー!」

私とEは口々に大声で叫びました。すると、「幽霊トンネル」ではない、その隣の現在利用されている方のトンネルからHとOが現れました。

「うおおお! 無事だったか!」

私達は思わず駆け寄りました。その時、HとOが私達の顔を見ると、意外な言葉を言いました。

「すいません。あまりに怖くて逃げちゃいました……」

Oの言葉です。

「なにが?」

私は、怖くて逃げたのはこっちだと説明しました。すると、HとOは「えっ?」というような顔をして、自分達が今経験した事を話してくれました。その話は、私とEがトンネル内で経験したものと同じ現象でした。

髪を振り乱した 何者ヽヽかヽが走って近づいてきたので思わず逃げ出してしまったという事だった。

私達四人は、お互いが同じ場所で同じ体験をしながらも、それぞれ別のものを見ていたという事だったのでしょうか?

 私達は、何か手がかりは無いかと、トンネル内で撮影していたビデオカメラをその場で再生してみる事にしました。

ビデオには何も写っていませんでした。デジカメにも何も写っていませんでした。それだけではありません。後日現像したフィルム写真も全て真っ黒でした。録音機器も全て無音で記録されていました。あのトンネル内の事は、何も記録されていなかったのです。

これが霊の及ぼす力なのでしょうか?

どのような力が働いたのか「幽霊トンネル」内で起きた現象に関しての物証を残す事は何も出来ませんでしたが、私達が経験した事は疑いようのない事実です。

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