蔵王にて(宮城県 蔵王) | コワイハナシ47

蔵王にて(宮城県 蔵王)

琢原君がスキーに行ったときの話である。

今から三年くらい前、琢原君は友人達と連れだって蔵王ヘスキーに出かけた。

山の奥へ進むにしたがって、野山や道路に積もる雪の量は次第に増えていった。

「そろそろチェーン巻こうか」

チェーンを装着するために路肩に車を止めると、前方に同じように車を止めたカップルがいた。

琢原君達の車に気付いたカップルの女のほうが、愛想のいい笑いを浮かべながら近付いてきてこう言った。

「すみませぇん。手が足りないのでチェーンを巻くのを手伝ってほしいんですが」

「ええ、お手伝いしましょう」

琢原君達は快くカップルの車のタイヤにチェーンを巻いた。すると、今度はカップルの男のほうが照れたような笑みを浮かべながら言った。

「どうもありがとうございました。お返しに、そちらのチェーン巻きもお手伝いさせて下さい」

せっかくの申し出であるし、少しでも早くスキー場へたどり着きたいという逸る気持ちもあったので、琢原君達はカップルの手を借りてチェーンの装着を終えた。

チェーンを巻き終えて工具をトランクに片付けていると、先に片付けを終えたカップルの車は、「お先に」と挨拶を残して走り出した。

ほどなくして、琢原君達の車も、積雪の増え始めた山道を走り出した。

前を走るカップルとの差は一分くらいであっただろうか。暫くの間、カーブのたびに彼方に見え隠れするカップルの車の後ろを、つらつらと走っていた。

カップルの車との車間距離がだいぶ縮まり、そろそろ追い付くなと思っていた頃、その車が視界からふっと消えた。同時に、さっきのカップルに手伝ってもらって巻いたタイヤのチェーンが突然外れてしまった。

「何だ!?」

不意に抵抗を失ったタイヤが凍りついた路面を滑り、琢原君達の乗った車は大きくスピンして、危うく崖から転落しかけた。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

血色を失った琢原君は必死にハンドルを切り、どうやら転落事故だけは免れた。覗き込むと、生きた心地はしない。それほど険しい断崖だった。

「くそ!あのカップル、チェーンの巻き方知らんのじゃないか!?」

そして琢原君達は、外れたチェーンを再び付け直し、何とかスキー場までたどり着いた。

二カ月ほど前。琢原君達が転落事故を起こしかけた丁度その場所で、琢原君達とまったく同じような状況の転落事故があった。

「……何でも、犠牲者は蔵王へ向かう途中のカップルだったとかで……事故車の車種と色がね、僕らの車にチェーンを付けてくれたカップルのと同じだったんだよね」

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