白装束の男(神奈川県) | コワイハナシ47

白装束の男(神奈川県)

白葉君の目撃譚である

霊を見た!という話はよく聞くが、具体的にどう見えたという話は意外と聞かない。多くの場合「世にも恐ろしい表情で」「怖い顔をした人が」という、凡庸な表現で言われてしまう。

また見た本人は本人で、突然現れたよく分からないモノに驚いて気が動転してしまっているから、何を見たのか説明させようとしても言葉が足らない。

おまけに驚いてその場から逃げ出してしまって、自分が何を見たのかは覚えておらず「とにかく怖かった」という感想しか伝わってこない。

こういう話を聞くと、どうしても「またまたあ」という懐疑の念しか浮かんでこないのは仕方のないことかもしれない。

小樽出身の白葉君は、高校を卒業してすぐ神奈川の大手家電メーカーに入社した。

ある日彼が寮から駅までの道を歩いていると、S字になったカーブの途中にある電柱の横に何かぼやけた靄のようなものが見えた。

「ん?」

道路の片側は開けており、もう片側はどこまでも塀が続くごくありふれた住宅街である。

白葉君がその靄のほうに向かっていくと、それは段々形がはっきりしてきた。近付けば近付くほど、靄はある一定の姿を形作っていく。

最初は後ろの風景が透けて見え、ただ白い靄っぱいものがそこだけに漂っているようにしか見えなかったのだが、そこに近付くうちに靄の背景が濁って見えなくなった。

靄が実体化するに従って、その輪郭部分がはっきりしていった。最初のうちは近眼か乱視の人のように輪郭線がダブって見えていたのだが、それは次第に特定の形に定まっていく。

白葉君の歩みが進めば進むほど、それはピントが合うかのようにくっきりしてきた。

「んんん?」

その靄はいつしか、白装束に身を包んだ男の姿になった。足下などまだ幾分半透明なままの所も残っている。

ここで白葉君は今来たばかりの道を少しだけ戻ってみた。

すると、先程まで輪郭がはっきりして実体に近付きつつあった白装束の男の姿が、再びぼやけ始めた。

「こりゃ、おもしろい」

再び用事のある方向へ踵を返した白葉君が白装束の男のほうへ向かって近付いていくと、男の姿はまたはっきりと見え始めた。

ところが、ある線を越えた辺りから、男の姿が霞み始めた。今度は男のほうに向かって歩いているにもかかわらず、である。

S字カーブの中程に差し掛かり、白装束の男の立っている電柱が白葉君の死角に入る。

再び電柱が見えてきたとき、もう男の姿も白い靄さえも見えなくなった。

男が立っていた辺りまで行ってみたが、やはり男の姿は見えなかった。

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