怪談アンケート──代行車サービス運転手編(群馬県) | コワイハナシ47

怪談アンケート──代行車サービス運転手編(群馬県)

群馬県は鉄道や路線バスが発達していない地域が多く、外で飲酒するときは車で出かけて、帰路は代行車サービスを利用する人が多い。そこで代行車の運転手に聴き取り調査をお願いしてみた。今回の調査協力者は高崎市と前橋市の会社に勤務する十一名である。

Q勤務中に怪奇な体験をしたことはありますか?

Aない八名

ある三名

※以降はこの三名へのアンケートとなる。三名は別々の会社に勤務。

Q怪奇な体験をしたときの状況は?

A深夜。乗客が眠ってしまったときにだけ体験する。

※三名とも、ほぼ同じ内容を回答している。

Qどのような体験をされましたか?とくに印象に残っている話を挙げて下さい。

ドライバーF氏(五十四歳、男性)

信号待ちの最中、フロントガラスに見知らぬ男の顔が映って、数秒後に消えました。髪を角刈りにした、額や頬に大きな傷痕がある醜い男の顔でした。中年の男でした。お客様は後ろの席で眠っていたので違います。

ドライバーG氏(三十七歳、男性)

山沿いの道路を走っていたときのことです。真っ暗な夜道に狸が飛び出してきたんです。小さかったから子狸でしょう。距離がまだ離れていたので、僕は慌てることなくブレーキペダルを軽く踏みました。ところが、その後ろから現れたものを見て、ぎょっとしました。

人間の二本足がヘッドライトの光の中に浮かび上がったからです。それは太腿まである、ごっつい男の足でした。ズボンを穿いていなくて裸足でした。

狸はジグザグに路上を逃げ回っていて、二本足はそれを追いかけていました。僕が運転する車が近づくと、どちらも道路を横切って暗闇に姿を消しました。そんなもんでも、田舎の夜道で出会うと、気味が悪くてねえ、鼾をかいて眠っているお客様をうらやまく思ったもんですよ。

ドライバーH氏(四十二歳、女性)

乗せると何か悪いことが起こるお客様、というのがいます。その手の方が乗ると、私はよく耳鳴りがするんです。ある夜遅く、仕事中に耳鳴りが起きました。そして田舎のほうの道路を走っているうちにお客様は眠ってしまった。何だか嫌な予感がしてきました。

そのうち道路っぱたに、半分壊れた廃屋が見えてきたんです。蔦がいっぱい絡みついている二階建ての、目立つ家でした。私は前にも何度か同じ道を通ったことがあるので、そこに廃屋があることを知っていました。その横を通り過ぎようとしたときのことです。

ガラスがなくなった窓から、いきなり人間が上半身を乗り出してきたんですよ。野良着みたいなぼろい服を着たお婆さんでした、白髪をぼさぼさに伸ばした……。その人が、私のほうに向かって手を振ったんです。

まさかそんな所に人がいるとは思わなかったので、もうびっくりしました。少しスピードを上げて廃屋から離れまして、お客様を無事に御自宅の前まで送り届けたのですが、帰りはできれば同じ道を通りたくなかったんです。でも、別の道を選ぶとなると、かなり遠回りをしなければなりません。それに今度は、お客様の車を運転してきた同僚が一緒に乗るので、少しは気が楽でした。だから同じ道を引き返したわけです。

そうしたら、おかしなことに、さっきの蔦だらけの廃屋が見当たらなかったんです。

「おかしいわねえ。見落として通り過ぎたのかな?」

そこで初めて同僚に、来るときに見た廃屋のことを話すと、首を傾げているんです。

「廃屋……?そんなもの、俺は来るときに見なかったぞ。いや、俺はこの辺をよく通るけど、前から蔦だらけの廃屋なんて見たこともねえぜ」

真夜中の車内で私たちは唖然としてしまいました。

私はそれから何日かして、仕事で同じ場所を通ったんです。だけど、やっぱり蔦に覆われた廃屋はありませんでした。

私が前から何度か見ていた、あの廃屋は何だったんでしょう?

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