ベランダ(愛知県名古屋市) | コワイハナシ47

ベランダ(愛知県名古屋市)

出版社勤務のNさんは幼い頃、名古屋市のアパートに住んでいたそうだ。

夏の夜のこと。

部屋に布団を敷いてもらって、横になった。

すぐそこにベランダがある。そのベランダを見るともなく見ると、手すり越しに赤ちゃんをあやしている女の人の後ろ姿が見える。

(あれ?)

Nさんの部屋はアパートの二階だ。ベランダのすぐ外に人が立っている姿を見たのははじめてだった。

不思議に思い、起き上がってベランダに出てみる。

誰もいない。

(気のせい?)

人が立てる訳がないだろうと、また布団に横になった。

(やっぱりいる!)

赤ちゃんを抱いてあやしているような女の人の後ろ姿。

じっとよく見て、見失わないようにゆっくりと起き上がる。すると女の人はそれに合わせるかのようにゆっくり下に下がっていく。立ち上がった時は女の人の頭はベランダの下になって見えなくなっていた。

(下だ!)と思ってすぐにベランダに出て下を見たが、道路には誰もいない。

(あれ)と思う。間違いなく人はいない。

仕方なくベランダの方を見たまま、ゆっくりと横になる。

すると、すぅっとベランダの下から女の頭が上がってくる。横になると、完全にその女の人の全身が見える。

そこへお母さんが入ってきた。

「まだ起きてるの?早く寝なさい」

「外に、赤ちゃん抱いた女の人がいる」

お母さんはちらっとベランダを見るが、

「何言ってるの、二階よここ」と取り合わない。

「私のところから横になると見えるの!」

仕方ないわね、とお母さんがベランダから身を乗り出して下を見回し、「いないわよ、ほら」と手すりから離れると、外に赤ちゃんを抱いてうつむいた白い顔の正面があった。

それ以後、Nさんはベランダの部屋で横になることはなかった。

シェアする

フォローする