雪の戸田川(大阪府) | コワイハナシ47

雪の戸田川(大阪府)

ある大阪の噺家さんの話。

随分前のことである。

この師匠は怪談噺を当時からよく演じているが、それにはお囃子がいる。幽霊の出るキッカケの笛、太鼓、三味線はもとより、お寺の鐘の音や場面転調の効果音など。ただ、これが予算のない公演や放送となると、お囃子さんを頼むことができない。そこでカセットテープに録音しておいて、キッカケでディレクターに音を出してもらえば、何とかなるやろう、そう思ってそのテープはいつも鞄の中に入れていた。

ある日、ラジオの公開録音に出た。ここで「雪の戸田川」という怪談噺をした。主人公の佐野屋治じ郎ろ兵べ衛えが元女房お紺を、川の中へ突き落とす場面。

「だあーっ」と気合いを入れた時がキッカケ。

ヒュ~、ドロドロ……

無事終わった。

師匠は同じテープを持ち帰って次の寄席で、「雪の戸田川」を演じて、同じキッカケで音を出してもらった。

「だあーっ」

ヒュ~、という笛の音にかぶさって「ぎゃぁぁあ!」という女の絶叫。

師匠は舞台で息を?のんだ。

このテープは間違えて音を消さぬようにツメが折ってある。音響さんも再生ボタンしか押さない。何かの声が録音されるはずがない。また、仮に何かの間違いで録音状態になっていたとして、お囃子の音を消さずにその上に重ねての録音はできない。

そもそもこの女性は誰なのか?

師匠はすぐさまこのテープをお寺へ供養に出したという。

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