師匠、どこ行くの(大阪府) | コワイハナシ47

師匠、どこ行くの(大阪府)

千日デパートが火災を起こした三日後のこと。

噺家のT師匠が出演していた難波の劇場から出て、昼食をとろうと千日通りを歩いた。賑にぎやかな大阪ミナミの繁華街。

と、向こうに顔見知りの若いホステスが立っている。

デパートの五階にあったキャバレーの娘だ。その娘が、

「師匠、どこ行くの?」と声を掛けてきた。

「今からメシやねん」

「そう、師匠またウチ寄ってや」

「うん」と言ってそのまま数メートル歩いた。

と、はっと思い出す。

(待てよ、今の娘、火事で死んだんや。そや葬式にでたがな……)

急に寒けが全身を襲った。振り返ってみたい気も起こるが、それも怖い。そう思うと余計怖くなって「わあーっ」とその場を走って逃げた。

数日後に同じ場所を通った時に気がついた。

その女性が立っていた場所は、ちょうど焼けたデパートの従業員入口のあったところだった。

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