墓地(大阪市) | コワイハナシ47

墓地(大阪市)

二十数年も前のことである。

大阪市内のあるお寺での出来事。

現在このお寺の住職をつとめるKさんは、その当時中学生だった。

その夜、両親が集会に出かけて、お兄さんとふたりで留守番をすることになった。

二階の部屋で兄弟並んで勉強していると、遠くからカツーン、カツーンと、鋭い金属音が響いてくる。

「にいちゃん、あれ、何の音やろ」

「えっ……」

カツーン、カツーン……。

さっきより音が近づいたような気がする。

「聞こえるな」と兄。

カツーン、カツーン……。

「おい、あの音、墓からしてへんか?」

そういえば境内の墓地からしているようにも思える。

窓を開けて外を見た。

昼間なら眼下に墓地が見渡せる。が、夜の墓地は闇に溶け込んで何も見えない。しかし、確かに音はそこからする。

「にいちゃん、泥棒ちゃうやろか」

「墓石荒らしというのがおるらしいしな。よっしゃ、ふたりで見にいってみよか」

バット片手に階段を降りかけると、お手伝いさんが出てきて「何でしょう、あの音」と怪訝そうな顔をする。

「墓石荒らしかも知れんから、僕らちょっと見てくるわ」と兄が言うと「とんでもない。危ないからおやめなさい」と止める。

「バット持っていくから大丈夫や」

しかしお手伝いさんは、どうしても行かせてくれない。

とはいえ、あまりに続くのでお手伝いさんもさすがに気味が悪いらしく「じゃあ、E兄さんに来てもらいましょう」と言う。

E兄さんは近所に住む檀だん家かの大学生で、柔道、空手の有段者である。

電話をすると早速来てくれた。

「あの音か?」

カツーン、カツーンという音は近づくというより、大きくなってるように思える。懐中電灯を持って三人で墓地へ入った。

闇に、カツーン、カツーンという金属音が響き渡る。その方向目指して歩く。と、ギョッとして三人は立ち止まった。

カツーン、カツーンという音に合わせて、ゆら、ゆらと青い火がゆらめいて見える。誰かが炬たいまつでも持っているのかなとも思ったが、それにしては色が変だ。近づいてみるとカツーンという音が響き、同時に青い火はゆらゆらっと上空に上がって、ポッと消えた。

E兄さんがダッとその方向に向かって走り、「誰やあ」と大声を上げた瞬間、怪しげな金属音もやんだ。

墓地はシーンと静まり返り、あたりを懐中電灯で照らしても誰もいない。誰かが逃げた、という気配もない。ただ、打って変わった静寂……。

その空気に耐えきれなくなって、三人はその場を駆け出した。

真夜中になってやっと両親が戻りそのことを報告すると「よし、それなら明日の朝一番に見てみよう」ということになった。

翌朝、空も明けきらぬうちにその墓に行ってみた。

何と、墓石のてっぺんに大きな鉄のクサビが打ち込まれていて、真っぷたつに割れようとしていた。

「こらえらいこっちゃ」

と父親はすぐにその家に連絡を入れ、しばらくして墓石は新しく建て替えられた。

「墓石にクサビを打ち込んで割るなんて、どんな怨みがあるんやろ?」と父はさかんに不思議がったという。

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