石炭と炭坑夫(北海道) | コワイハナシ47

石炭と炭坑夫(北海道)

N子さんは、北海道の炭坑町の出身である。

彼女がまだ幼かった頃のことだ。

ある夕暮れ時、お父さんと一緒に行った銭湯からの帰り道、線路沿いの道を通った。昼間、石炭を積んだトロッコが行き交う線路だ。

お父さんと手をつなぎながら歩いていると、ふっと気づいた。今まで誰もいなかった前方に人がいる。

ぼろぼろの作業服を着た炭坑夫のおじさん。その人が線路沿いを歩いてはしゃがんで何かを拾い、また歩いてはしゃがんで拾っている。その様子がどこか変だ。

よく見ると、その人の肩から上がない。

思わず、お父さんの手をぐっと握った。

「どうした?」とお父さん。

「あのおじさん、首がない」

「首?おじさん?」

しばらく考え込んでいたお父さんが、こんなことを言った。

「それはきっと、戦前に強制労働で連れて来られた人だろう」

彼らは日本に連れて来られて炭坑での重労働を強制された。異国での貧困と苦悩の生活がそうさせたのか、随分と争いが絶えず、ツルハシやスコップを振り上げての喧けん嘩かも多かったらしい。

ぽんと相手の首が飛んだこともあったと聞く。

線路沿いの道では、彼らが生活のための燃料を手に入れようとトロッコからこぼれ落ちた石炭を拾う姿がよく見られた。そんな話をお父さんから聞かされた。

「そうか、N子には見えるのか」

そうお父さんが言った瞬間、前を歩いていた首のない炭坑夫の姿がふっと消えた。

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